FEATURE レポート紹介

社会のテーマに挑み、将来の医療に生かす
=人権と平和に関する委員会―SCORP=

 SCORP(Standing Committee on Human Rights and Peace)は、日本最大級の医療系学生団体IFMSA-Japanの常設委員会の一つ。「ACTION-Project」「HiNaP」「LAMP」「LARF」の4つのプロジェクトを基盤に活動し、貧困や社会的弱者、女性、虐待、難民、災害、紛争などの問題、学校教育や普段の生活では触れることが少ないトピックについて学んでいる。

基盤の4プロジェクト

SCORPには、ディスカッションやワークショップ、フィールドトリップを通し、広い見識を持った医療従事者を目指す医学生が集まり、専門的に活動している。
 ACTION-Projectは、災害医療の次世代リーダー育成を目的としたアジア太平洋地域唯一の多国籍プロジェクト。韓国やネパール、インドネシアなどの医学生も参加し、年1度行われるサマーキャンプには、100人程度のアジア地域の医学生らが参加している。
 主な活動は、災害医療の専門家を招いた講演会や被災地訪問。名古屋大4年の社本賢昭さんは「避難所設営や公衆衛生など、私たちにもできることがあります。医学生だからこそ、医療と市民をつなげる存在になれるのではないかと思います」と話す。
 HiNaP(Hiroshima Nagasaki Peace Project)は広島と長崎を中心に活動し、平和に関連する学習を行っている。
 「年々、被爆者の方々が減っています。自分たちが貴重な話をうかがえる最後の世代かもしれません。それを意識して戦争について学び、将来に生かすのはもちろん、次の世代に伝えていくことも大切だと感じています」と、社本さんは話す。

パワーポイントなどを使って発表、議論する

サマーキャンプの模様。
アジア地域の医学生が集うACTION―Projectの一大イベント

パワーポイントなどを使って発表、議論する

東日本大震災の被災地である宮城県石巻市を訪問。
被災地の現状について学んだ

パワーポイントなどを使って発表、議論する

左から近畿大3年の松本悠佑さん、
名古屋大4年の社本賢昭さん、岐阜大3年の新井康允さん

貧困の偏見をなくすため

LAMP(Law and Medicine Project)は、法学生団体「ALSA」(The Asian Law Students’ Association)と共同で活動。医学と法学の異なる視点から、学生同士が交流を深めている。
 岐阜大3年新井康允さんは「世の中では多くの医療裁判が行われています。法学生の意見を交えながら、実際の訴訟についてディスカッションすることで新しい発見があります」と話す。ALSAには法学部だけでなく、心理学部や経済学部の学生も所属。専門知識を持つ学生たちと知識を寄せ合い、さまざまなテーマについて考えを深めていけるのが魅力という。「地域に電子カルテを導入する際にはどのような障害があって何をクリアすればいいのか。そうした実践的なケースについて、海外の事例を持ち出して共に勉強しています」
 LARF(Learn About ReFugee)は、貧困について学ぶプロジェクト。日雇い労働者が多く住む簡易宿泊街に足を運び、貧困の現実について知見を深めている。近畿大3年の松本悠佑さんは「貧困についての考え方が変わった」と振り返る。
 「日雇い労働者が集まる街、大阪・釜ケ崎のスタディーツアーに参加したのがきっかけです。小さい頃から祖母の世代に『あそこには行くな』と聞かされていました」と松本さん。しかし実際に足を運んでみると、自分が聞いていた世界とはかなり違ったという。「偏見が残っているんです。それを取り除いて正しい情報を発信していくことが私たちの役目。釜ケ崎は自分が通う近畿大学から近いですし、いつか自分が貧困に苦しむ方々を診察する機会があるかもしれない。そういう意味でも現状を知っておくことが大切だと思いました」

パワーポイントなどを使って発表、議論する

広島市の原爆ドーム前で。可能な限り現地へ赴いて学ぶのがSCORPの活動方針

社会の難題から逃げない

SCORPはIFMSA-Japanの中でもとりわけ大きなテーマを掲げ、幅広い活動を行っている委員会だ。
 「貧困も虐待も、そういう世界を知らずに、もしくは見て見ぬふりをして何となく医学部に進学した学生は多いと思います。『それでいいのだろうか』と疑問を持っている学生たちがSCORPには集まっているのではないでしょうか」と社本さん。取り組むテーマには、どれだけ学んでも悩んでも答えを導き出せないような難題もあるが、「目を背けず、共に考えていくのがSCORPです」と話す。
 人権や平和は医療と関係がないように思えるが、SCORPで学んだことは将来に生きると信じている。
 「いつか患者さんに接するとき、目の前の病状だけでなくこれまで歩んできた人生や背景にある家族についても考えられる医療従事者になることが私たちの目標。そして、世界中で苦しんでいる人たちに対して何かできることはないか探していきたい。小さなことでも構いません。それを見つけてアクションを起こしていけたらと思います」と力強く語った。