医学生のフィールド

医療系の卒業生に学長がオンラインでエール
~コロナ禍における筑波大学の取り組みを紹介~

 筑波大学は2020年12月から「卒業生×学長オンライン飲み会」を実施している。毎年、文化祭(雙峰祭)時に卒業後20年の卒業生を大学へ招待してホームカミングデーを催しているが、2020年度は新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催となった。そこで、本企画はコロナ禍で普及したオンラインシステムを活用し、学長と卒業生が気軽に交流できるよう、「今度、学長と飲まない?」というキャッチコピーで企画された。筑波大学卒業生が5人以上誘い合って、WEBサイト上で申し込めば、学長と日程調整して参加できる。

 3月27日に開催された会に医療系の卒業生に加えて在学生5名が特別に参加、永田恭介学長に質問を投げかけながら交流を深めた。

 看護学部卒業で看護師をしている卒業生からは、現場に出て自分の勉強不足を実感、大学院で学びを深めたいという。学長から「卒業して1度社会に出て大学に戻るというのは自分の伸び代がわかって何が学びたいかが明確になっているので、一番理想的なタイミング。ぜひ戻って来てください」とエールが贈られた。
現役生として参加した医学部6年生。コロナ禍で何か自分にもできることはないかと、健康についてのライブ配信やS N Sで情報発信をしている。エビデンスがなく、絶対これが正しいと言えない情報を発信することの難しさについて相談した。「エビデンスがいくらたくさんあったとしてもエビデンス以外のエビデンスがきっとある。自分はミニマムしか知らないということを前提としてどこに価値観を置くかで決断する。正しいかどうかはまずは置いておいて、メッセージを出すことに必要性を感じているのであれば何をどう伝えたいかが大切。批判を恐れずに受けて立てばいい」と回答された。

 「学長はなぜ学生が好きなのか」同じく医学部6年生の学生の質問には、学長が大好きな小説『十五少年漂流記』を例に挙げ、「私の頭の中は今も少年の時のまま。自由にいろいろなことを考えて、まだまだやりたいことがいっぱいある。こうして皆さんと一緒に過ごす時間も楽しくてしょうがない」と答えた。

 最後は、研究者を目指す卒業生から学術雑誌での引用頻度を測る指標インパクトファクターについて、研究者の立場でどう考えるかという質問に回答。「評価される論文が見られているのは研究の中身のオリジナリティーやユニークさ。学術雑誌の場合、その雑誌が売れるか売れないかで掲載する論文が選択される。つまりそこですでにバイアスがかかっているということ。日本人は成果主義に陥りやすいので、研究費を競いあったりするけれど、本来は内容と計画の実現性が評価されるべき。こういうものを作ってこういう社会にしたいという思いも持って提案することが大事。小さい論文であっても読んでみたいと思われる論文を目指してほしい」

 参加者からは「学長の一流の精神に触れることができてよかった」「研究を志すにあたって励みになった」と「また機会があれば参加したい」という声が上がった。

 イベント執行部からは学長の協力が得られる限り、今後もこの活動を継続していくと言う。(了)

 ※卒業生×学長オンライン飲み会HP 


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