医学生のフィールド

中高生の不安をズバリ解消 海外大受験 必勝座談会

 海外の大学への受験は近年、日本でもポピュラーになってきました。海外の有名大学に進学を考える高校生が増えつつある中、周りに海外大受験の先輩がいないため、情報を得られにくい状況にあります。

 今回はinochi Gakusei Innovators' Program(*1)修了生で、マサチューセッツ工科大学(MIT)・コロンビア大学に見事合格した、保呂さん(MIT2年)・田中さん(コロンビア大学2年)による「海外大進学を考える中高生のための座談会」が2月21日にオンラインで開催されました。(主催:inochi WAKAZO project)

オンラインで開かれた必勝座談会

オンラインで開かれた必勝座談会

 どのようにして海外大入試を突破することができたのか。

 気になる勉強方法や海外大進学を決意したきっかけなどについて、中高生からの質問に本音で答えていただきました!

 司会:國富太郎(順天堂大学医学部医学科3年)、文:宋韓屹(東京大学理科三類1年)

 【保呂さん】

 ◇きっかけは生物学を学びたいという強い思い

 海外大を志望した理由は大きく3つあります。在学していた高校の会誌に掲載されていた海外大進学者の話に影響を受け、さらに海外大への進学を希望する友人からの刺激を受けました。私は高校時代から生物学オリンピックに参加するなど生物学に大変興味があり、生物学を学びたいという強い思いがありました。東大とMITを併願した先輩から海外大の進学を勧められ、今在学している大学を選びました。

 現役時代、東京大学理科二類にも合格し、前期の半年間在学しました。東大は半年しか在学していないので、全てを知っているわけではありませんが、自分の体験を基に違いを話させていただきます。さらに、最も異なっていると感じたのは、MITでは他国の大学や企業と共同で行う対外的なプログラムは、東大よりもはるかに多いです。例えばMISTIというプログラムでは、MITの学生が海外の高校生に対して教える、いわば教育インターンシップを行います。大学側からより多くの全く異なった文化に触れる機会を提供してくれます。

 授業の重さという観点では東大の方が比較的軽いイメージです。MITでは授業ごとに予習・復習が必須となるため、ある程度、時間が拘束されます。授業数も多く、自由な活動が難しいと感じています。

 利点としては、授業の中身が濃く、半ば強制的に内容をきっちりと修めることができる点です。私の場合はコンピューターサイエンスや物理学、数学などがこれにあたります。逆に欠点としては、自分と同じように考えて学んでいる仲間が見つかりにくいため、学習のモチベーションを維持することが難しく、精神衛生に注意しなければならないことだと思います。

 【田中さん】

 ◇世界最高峰の仲間と交流して刺激を受けたい

 私は高校1年の頃は小児科医を志望しており、その影響でこのinochi Gakusei Innovators' Programにも参加していました。当時のメンターから「医学部よりもアメリカの大学に行ったほうが面白いと思う」とアドバイスされ、海外大の進学を考えるようになりました。

 最終的に決定した理由としては、大きく三つあります。一つ目は医学に興味はあったのですが、それが臨床医学だったのかに確信が持てなかったということです。日本の大学の医学部に進学すれば、大半の人が臨床医になるので、もう少し考える時間が欲しいと思いました。二つ目は海外の最高峰で同世代の仲間と交流し刺激を受けたいと思いました。そして三つ目は工学部でもカリキュラムとして工学部で工学のみならずCoreを通じた人文系の授業であったり、横断的履修制度で医科大学院の授業であったりが履修可能だったという理由からコロンビア大学を選びました。

 ◇自分の好きなことをやりたいだけやった高校時代

 実際、高校時代は、自分の好きなやりたいことを好きなだけやると言うコンセプトでした。inochi Gakusei innoveter's Program*1に参加し、医療機器の開発・提案を行ったり、未踏ジュニアでは教育アプリの開発を行ったりしました。また、さらには模擬国連同好会に所属していたので、模擬国連に参加し、ディベートを行うこともありました。

 ◇最先端のバイオインフォマティクスを学んでみたかった

 コロンビア大学を選んだ理由としては、まず総合大学都市の強みがあり、研究や課外活動としての機会も豊富です。次に立地が良いです。ニューヨークという都心の真ん中にキャンパスがあり、野心的な学生と出会って自分を磨いていきたいと考えたからです。さらにはバイオインフォマティクスの最先端であるアメリカで学んでみたかったという点です。日本はこの分野においては遅れているため、最先端の医療科学や情報科学を学ぶにはアメリカの方が良いと思ったからです。

 ◇コロナ禍でもアクティブな活動で充実した大学生活

 コロナがはやる前は医科大学院にてバイオインフォマティクス*2系の研究を行っていました。また、授業が重く、教養科目も多かったため基本的にはずっと勉強し、時間ができたときはニューヨークの街を練り歩くなど、充実した大学生活を過ごしていました。コロナ流行後の生活は、毎日午後の11時から午前4時の間に授業を受けていたので完全な昼夜逆転生活になっていました。また、研究活動としては大学での研究を継続しつつ、他にも日本のベンチャー企業であったり、大学院大学やベンチャーキャピタルであったりでのデータサイエンス系の研究に従事していました。さらにATELIER BASIという海外の大学に行きたい受験生・高校生の支援のプログラムの運営を行っています。

 <中高生からの質問>

 ―海外大進学のために高校時代、これはやっておいた方がいいということはありますか。

 保呂:海外大へ進学すること自体が目的となってしまうのは良くないと思います。自分は課外活動の延長として海外大への進学を選択しました。自分のやりたいことを基準に大学を選択したほうがいいと思います。この話を前提として、高校時代にやっておいた方がいいのは、間違いなく英語だと思います。アメリカや英国の、特に上位の大学に行くのであれば英語力は必須となります。

 田中:語学力は必須だと思います。自分の好きなことを突き進めていくことも同感ですね。

 ―受験の際に、日本の大学をどれくらい視野に入れていたのでしょうか?

 保呂:中高が進学校だったので東大理一・理二であれば高3はある程度やれば合格できたと考えていました。高3の頃は少し余裕があり、海外の大学についていろいろ調べていました。

 田中 アメリカの大学の学費が高く、セーフティーネットとして奨学金が必要でした。大学合格時に奨学金が得られない可能性もあったので、日本の国公立大学との併願は考えていました。

 ―語学力は実際のところ、どれくらいのレベルが必要とされていますか。

 保呂:TOEFLという試験が必須です。120点満点なのですが、海外の有名大学に出願する場合は多くの大学が100/120を最低ラインにしています。できれば110/120欲しいですね。MITはminimum scoreという制度を持っています。scienceの能力を重視するため、英語力に関してはある程度の90/120でよかったです。私自身は104点で出願しました。

 田中: TOEFLを受験するのが一般的です。 私が運営している海外大進学サポートプログラムではDuolingoを用いている高校生もいました。私は帰国子女ということもあり、そこまで英語の対策はしなくても、大学の満たす基準はクリアしました。けれども、入学後の1年時は語学の問題に苦しみましたね。

 ―海外大学を受験することに対して、両親は協力的でしたか。

 保呂:親が海外大受験について頭になかったので、まずは説明から始まりました。自分自身、中学に入ってからは好き勝手やっていたので…あまり文句などは言われませんでした。

 金銭面はどうしても負担をかけてしまうのですが、私の場合、柳井財団からの奨学金をいただいているため、家からの負担はほとんどなかったことも説得できた一つの要因です。

 田中:学費は日本の大学の国公立ぐらいの学費までしか出してもらえなかったため、奨学金や学費免除を取らなければ進学できない状況でした。日本の大学と併願して合格しておいてから決めるというのもありではないでしょうか。

 ―本日は貴重なお話をありがとうございました。海外大という受験情報が少ない中、受験を後押しできたのではないかと思います。(了)

 *1-inochi Gakusei Innovators' Program
 inochi WAKAZO Project主催の中高生による医療課題解決プログラム

 4〜6月に中高生を募集し、その後、面接選考を経て選ばれたチームが3カ月間の医療課題解決に取り組む。これまでに国内外合わせて700人以上の修了生を輩出してきた。その中には、今回の座談会に登壇した保呂くんや田中くんのように海外大学に進学した人だけでなく、国内最難関大学の医学部に進学した人も多い。

 今年で7年目を迎え、関東・関西・金沢・徳島の4地域で開催します。プログラムに関する詳しい情報は以下のURLのHPをご覧ください。なお、今年のプログラムに関するHPは現在作成中。
(HP:https://inochi-wakazo.org/projects/igip)

 *2-バイオインフォマティクス

 生命科学と情報科学の融合分野のひとつであり、DNAやRNA、タンパク質をはじめとする、生命が持つさまざまな「情報」を対象に、情報科学や統計学などのアルゴリズムを用いた方法論やソフトウエアを開発し、またそれらを用いた分析から生命現象を解き明かしていくことを目的とした学問分野。

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