一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師

(第11回)
「恩送り」で後進の育成
減量手術をもっと多くの人に

◇「練習すれば必ずできる」

 日系米国人の恩師、ケルビン・ヒガ氏がそうであったように、笠間氏も若い医師たちに「自分は天才ではない。練習すれば必ず同じようにできるようになる」と伝え、励ます。

 「僕は手先は器用ではないし、子どもの頃、工作も絵も得意ではなかった。近眼と老眼があって、特に視力がいいわけでもない。手術ができるようになる人とならない人の違いは、努力の差です。ほとんどの人は効果的な練習の量が圧倒的に足りないだけです」

 笠間氏は、腹腔鏡手術のトレーニングボックスを使って、努力を重ねた。腹腔鏡下で行う減量手術の場合、通常、腹部に1センチ程度の穴を五つあけ、そこから長い鉗子(かんし)や腹腔鏡を挿入、おなかの中をモニター画面に映し出して手術する。

 「重症肥満患者は皮下脂肪も厚く、内臓脂肪も多いため、脂肪をかき分けて手術するには高度な技術が必要です。僕も日本内視鏡外科学会の理事・教育委員として、どうすればうまくなるのか、トレーニング方法を研究しています」

 減量外科治療に関して、笠間氏は海外の医師たちから数多くのことを学んできた。ある時、彼らに「お返し(Pay back)をしたい」と言うと、「お返しなど必要ない。君の技術や学んだことを僕らがしたように、ほかの人に教えてやってくれ。Pay forwardだよ」と言われたことが印象に残っているという。

「手術ができるようになる人とならない人の違いは努力の差です」

 笠間氏が初めて減量手術を行ってから16年。かつて笠間氏が恩師、ヒガ氏の手術に感動したように、笠間氏の公開手術を見て減量外科医を目指す若い医師たちが海外でも育ってきている。「僕も少しずつPay forwardができているのかな」(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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