一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏

(第20回) 陛下手術で「秘策」 =心原性脳梗塞防ぐ

 天皇陛下の心臓バイパス手術が行われた際、手術後に初めて公表された「秘策」があった。脳梗塞予防のための左心耳縫縮術だ。左心耳は左心房上部にある耳たぶのような突起で、そこを糸で縫い縮めて血液が通らないようにする手術という。

 「心房細動(用語解説)という不整脈で血液がよどみ、左心耳に血栓ができます。それが脳の血管に飛んで脳梗塞を引き起こします。その予防のために行いました」と天野氏。「心臓バイパス手術中に心房細動が誘発された場合、この手術も行うことを陛下にも説明申し上げ、医師団の間でも合意ができていた」という。

 心臓でできた血栓が血液の流れに乗って脳の太い血管に詰まる心原性脳梗塞は、近年増加傾向にあり脳梗塞全体の3分の1を占める。他の脳梗塞よりも死亡率が高く、助かったとしても寝たきり状態になるか、介護が必要な重い後遺症が残る可能性が高いとされる。故小渕恵三元首相やサッカーのイビチャ・オシム監督、巨人の長嶋茂雄名誉監督がかかったのもこの病気だった。


【用語解説】心房細動 不整脈の一種。心房が1分間250回以上、細かく不規則な収縮を繰り返す。心原性脳梗塞の原因になる可能性があり、早期発見が重要とされている。

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一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏