一流に学ぶ 日本女性初の宇宙飛行士―向井千秋氏

(第8回)9年待ち42歳で宇宙へ =研究者と面談、投票促す

 ◇天女になって飛ぶ

スペースシャトル行きのバスに向かいながら、笑顔で出発する向井千秋さん(94年7月、ケネディ宇宙センター)
 94年7月8日、向井氏はスペースシャトル・コロンビア号にPSとして搭乗。多くの国民がテレビの前で宇宙からの映像を見守った。「天女になって飛んでいるよう」というセリフとともに、シャトルの中を楽しそうに浮遊する向井氏の様子を記憶している人も多いだろう。

 「宇宙から初めて地球を見た時、ちょうどインド洋の上辺りにいて、海の青が本当に美しかった。地球って、ほとんどが海なんだって改めて実感しました。地球の球面の端には、地球を覆う大気層が太陽の光に透けていて、その向こうには漆黒の闇。こんな黒って見たことがないというような吸い込まれそうな黒でした」

 無重力空間を体感した時、最初は重力がないというよりも天井に向かって引っ張られるように感じたという。「スペースシャトルが予定外の回転を始めてしまって、天井方向に重力が発生しているんじゃないかと本気で心配したけど、初めて無重力空間を体験すると誰でもそう感じるんだって」

 無重力空間では、手を離すと物はすぐに飛んで行く。書類もペンもすべてマジックテープで止めておかないと、どこかへ浮かんでなくなってしまう。「歯磨きするとき、他の飛行士は口をすすいだ水をそのまま飲み込んでいた。落とした水分が飛んで行ってシャトル内の精密機械に付着すると、思わぬ故障の原因になるから。でも私はそれができなくて、ティッシュを口の中に入れて吸収させてました」

 体験することのすべてが面白く、驚きの連続。「私はもともと感動屋さんだから、感動の毎日でした」と振り返る。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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一流に学ぶ 日本女性初の宇宙飛行士―向井千秋氏