一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督

(第6回)きっかけは挫折から
本との出合い

 「挫折は結構あるのです。例えば、2年目にホームラン王を取れたのですが、翌年は絶不調に陥りました。1年目のオフにはウインターリーグに行き、無我夢中で頑張っていました。ところが、タイトルを取って、だいぶてんぐになっていました。自分で感じるほどです」。小久保裕紀さんはこう語り、「恥ずかしい」「恥ずかしい」と繰り返した。

現役時代から読書が好きだった小久保さん
 しかし、そこから先が小久保さんらしい。

 「人は、調子が良い時に何かを吸収できる保証はありません。良くない時には、『このままではいけない』『今の自分を変えなければいけない』と思い、何かに出合うのではないでしょうか」。人によっては、その後の人生に影響を与えるような人物に会うことだったりすることもある。小久保さんの場合は、ある本だった。経営コンサルタントの船井幸雄さんの書いた「エヴァへの道」(PHP研究所刊)。偶然、違うルートで1週間に2冊手に入り、「これはメッセージだ」と感じたと言う。

 読み始めた時は、野球には関係のない訳が分からないことが書いてあった、と感じた。「1冊だけだったら多分読まなかったでしょうね。でも結局、船井さんのファンになって、静岡県熱海市のお宅まで訪ねました」。船井さんは、石村万盛堂という福岡の老舗菓子店のコンサルティングを担当していた。船井さんが福岡にやって来ると、小久保さんは前夜がナイトゲームであっても、朝の7時に宿泊先のホテルに行き、30分だけ食事を共にしてから家に戻った。午前中に講演があると聞けば、講演を聞いてから試合に臨んだ。「基本的に良いと思うことはやってみる、僕には、素直な部分がすごくあると思います」

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一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督