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リウマチの最新治療 【第10回(最終回)】

生物学的製剤は、従来の薬物療法で十分な効果が得られなかった場合や、進行が速い患者さんに適用される(イメージ画像)

生物学的製剤は、従来の薬物療法で十分な効果が得られなかった場合や、進行が速い患者さんに適用される(イメージ画像)

 ◇最新の【生物学的製剤】で改善を目指す

 関節リウマチ治療において、生物学的製剤は大きな進展をもたらしました。この治療法は、免疫システムの働きを標的にすることで炎症を根本から抑え、関節の破壊を予防することを目指しています。特に「治療の目標を明確に定め、達成を目指す」Treat to Target(T2T)の考え方において、生物学的製剤は重要な役割を果たしています。

 生物学的製剤は、従来の薬物療法で十分な効果が得られなかった場合や、進行が速い患者さんに適用されることが一般的です。生物学的製剤の利点として、炎症の抑制が迅速かつ効果的である点が挙げられます。さらに、関節破壊の進行を遅らせるだけでなく、炎症がほぼ完全に抑えられる「臨床的寛解」の達成も期待されています。

 ◇生物学的製剤の投与は点滴か皮下注射から選べる

 生物学的製剤の使用方法として、患者さんのライフスタイルや治療環境に応じて「点滴」と「皮下注射」のいずれかを選択することができます。それぞれ特徴があり、患者さんの状態や生活の便利さに合わせて選択することが重要です。

 【点滴】予約を取って医療機関で1〜2時間程度点滴を受ける

 点滴療法では、予約した日時に医療機関を訪れ、薬剤を1~2時間かけて体内に投与します。メリットとして、医師や看護師が近くにいるため、治療中に気になる症状や疑問があった場合にすぐ対応してもらえる点です。

 また、自宅で薬剤を保管する必要がないため、冷蔵管理や医療廃棄物の取り扱いについて心配する必要がありません。さらに、治療中は音楽を聴いたり、本を読んだりすることでリラックスして過ごせるため、通院時間を有意義に使うことができます。

 点滴療法で使用される代表的な生物学的製剤には、レミケード(TNFα阻害薬)、アクテムラ(IL-6受容体阻害薬)、オレンシア(T細胞活性化抑制薬)などがあります。薬剤は、患者さんの症状や進行状況に応じて選択されます。

 【皮下注射】在宅で自己注射ができるが、注射剤の管理が必要

 皮下注射は、短時間で治療を終えたい場合や通院が困難な場合に適した方法です。特に、治療の間隔が短い場合(週1回や2週間に1回など)には、自宅で自己注射を行う選択も可能です。自己注射を行う場合は、医療機関で使用方法を十分に習得した後に開始されます。注射剤は冷蔵庫で保管する必要があり、家族や特に子どもの手が届かない場所に保管することが求められます。また、使用後の注射器は医療廃棄物として適切に処理し、家庭ごみと一緒に廃棄しないよう注意が必要です。

 自己注射用の生物学的製剤には、エンブレルやヒュミラ、シムジア、アクテムラ、オレンシアなどがあります。中には、ボタンを押すだけで薬剤を注入できるオートインジェクターを使用する製剤もあり、注射の際の負担を軽減する工夫がなされています。

 ◇最新の生物学的製剤をうまく活用し、リウマチの改善を目指しましょう!

 リウマチ治療は、症状や進行具合に応じた適切な治療法を選ぶことが重要です。生物学的製剤は炎症を抑え、関節破壊を予防する効果が期待できる最新の治療法であり、生活スタイルに合わせて点滴や皮下注射の選択肢もあります。

 さらに、薬物療法だけでなく、手術療法やリハビリテーション療法を組み合わせた多角的なアプローチが必要です。日々の治療や生活習慣を見直しながら、症状の改善と生活の質向上を目指しましょう。自分に合った治療法を選び、リウマチの改善に向けて医師と共に最善の道を歩んでいくことが大切です。(了)

湯川宗之助医師

湯川宗之助医師

 湯川宗之介(ゆかわ・そうのすけ) 75年生まれ、東京都出身。00年東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年に湯川リウマチ内科クリニックを開院。16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、さまざまなメディアでも紹介。20年にはKADOKAWA出版より書籍を発刊。


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