こちら診察室 依存症と向き合う

第7回 依存症は「家族を巻き込む病気」
患者本人にとどまらず ~久里浜医療センターの「今」~

 ◇リフレッシュの時間

 二つ目は、リフレッシュできる時間と機会です。ゲーム障害の家族が集う会に参加することもリフレッシュの一つです。

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 同じ立場の家族通しの体験談を通じて、過度な不安や後悔が軽減されます。うまくいった具体的な家族対応の事例を聴ける機会でもあります。依存症者のために使った時間や労力に応じて、好きなカフェに入るなど、自分自身へのご褒美を意図的に与えることも有効です。

 依存症者を持つ家族の問題は、なかなか表面化しません。しかし、自宅を訪問できる児童福祉や高齢者福祉の地区担当者、生活保護のケースワーカーは実情の把握が可能です。こうした人たちは、家族を支援して状況を改善、適切な対応を取れるように手助けすることが可能です。

 依存症者の例ではありませんが、そうした福祉機関と精神科病院の支援者らが連携し、困難を抱えていた家族に対応したケース(架空事例)で具体的に考えてみましょう。

〔認知症の父に暴力〕
 ◇いら立ち、多量飲酒

 80歳になるCさんは50歳の息子Dさんを二人暮らし。ある日、転倒して骨折、入院しました。Cさんは入院費が払えない実情を病院のソーシャルワーカーに相談し、生活保護を受けることにしました。

 ソーシャルワーカーがCさんに代わって市役所に電話した際、Cさんの体に複数のあざがあり、面会に来るDさんに酒の匂いがすることも伝えました。市役所職員は、障害福祉課と高齢福祉課にその情報を伝えます。また、Cさんの言動から認知症の疑いが強いことも分かりました。

 退院してすぐに生活保護と高齢福祉の地区担当者が自宅を訪問して、生活状況を聞きます。Dさんは失職後、Cさんの世話をしていましたが、高齢のCさんは物忘れや失禁が増え、その対応へのいら立ちから時に暴力をふるったり、ストレス発散のため、お酒を多量に飲んだりしてたといいます。

 ◇息子の依存症を治療

 認知症の初期集中支援チーム会議が開かれ、地域包括支援センター、依存症専門病院のスタッフも参加しました。Dさんは過去にお酒の問題で病院を受診し、入院を勧められましたが、医療費の問題から治療を中断していました。

グループホーム(イメージ。本文とは関係ありません)

 生活保護が開始となり、Cさんは介護保険で訪問看護を受けます。生活保護の担当者と訪問看護師は自宅訪問の際、Dさんに介護疲れについて尋ねるとともにアルコール依存症の専門病院を一緒に受診しないかと提案しました。

 一人での受診には心理的抵抗があり、父親を置いていけないという気持ちがありましたが、お世話になっている方々の気持ちにも応えたいと受診を決めました。

 ◇喜びを分かち合う

 Dさんは入院。その間、Cさんは高齢者のショートステイサービスを受けます。半年後、Dさんは入院中に会いに来てくれたアルコール依存症の自助グループメンバーとなり、父親は自宅近くの認知症対応のグループホームに入居しました。

 福祉関係者や依存症などの専門家が連携して対応すると、家族への支援がスムーズに行くケースは多いと思います。

前園真毅氏

 「この世で最も不幸な家族は、依存者のいる家族である。この世でもっとも幸福な家族は、依存から回復した人と共にある家族である」という言葉があります。また、一人の支援者として臨床で感じることは、「回復の過程で支援者も家族と共に気づき、成長し、その喜びを分かち合い続けることができる。そのこともまた幸せである」ということです。(久里浜医療センター医療福祉相談室室長・精神保健福祉士 前園真毅)

前園真毅氏(まえぞの・まさき)
淑徳大大学院社会福祉学博士前期課程修了。埼玉県立精神医療センター、川口保健所などを経て2009年久里浜医療センター医療福祉相談室長

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