こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療

膵臓がん、発見・治療難しく 【第8回】

診断の流れ(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

診断の流れ(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

 ◇診断にはCT・MRI・内視鏡検査

 膵臓がんの診断は複数の検査を組み合わせて行います。疑いがある場合、造影CT、腹部MRI、超音波内視鏡(EUS)による検査がまず選択されます。より詳しい所見や細胞・組織の採取を目的に逆行性胆管・膵管造影(ERCP)が行われることもありますが、どの検査を行うかは医師の指示に従ってください。がんの進行度合いである病期(ステージ)を診断する際には、造影CT、造影MRI、EUS、陽電子放射断層撮影(PET)、腹腔(ふくくう)鏡による腹腔内の検査が追加で行われます。

 血液検査も診断の補助や治療効果の判定に役立ちます。膵臓がんがあると、膵臓で作られる酵素であるアミラーゼ、エラスターゼ1などが漏れ出て血液中の値が高くなることがあります。また、特定のがん種によって作られるタンパク質(腫瘍マーカー)が測定されるケースも見られます。ただ、酵素や腫瘍マーカーはがんがあっても値が高くならなかったり、他の病気によって高くなったりすることもあるため注意が必要です。

病期(日本膵臓学会)=出典:国立がん研究センターがん情報サービス

病期(日本膵臓学会)=出典:国立がん研究センターがん情報サービス

 ◇手術、薬、放射線で治療

 膵臓がんの治療は手術、薬物療法、放射線療法などです[2]。がんの進行度は画像検査などによって推測され、I期(ステージ1)、II期(ステージ2)、III期(ステージ3)、IV期(ステージ4)と進行するにつれ、次のように病巣が広がります。

 ▼ステージ1:腫瘍が膵臓の中にとどまり、リンパ節に転移していない。
 ▼ステージ2:腫瘍の一部が膵臓の外に出る。
 ▼ステージ3:腹腔動脈または上腸間膜動脈にがんの浸潤を認める
 ▼ステージ4:肝臓、肺、腹膜、大動脈周囲リンパ節などへの遠隔転移を認める。

 一般的にステージ1と2は手術で切除可能、3と4は手術では取り切れません。年齢や体力、もともとの病気によっても治療方法が異なりますので、主治医の先生とよく話し合いましょう。

 早期発見が難しい膵臓がんですが、新しい治療法や診断法によって近年、生存率は向上しています。健康状態について気になる点があれば、信頼できる医師に相談してください。(了)

高木院長

高木院長


高木謙太郎(たかぎ・けんたろう)
 2007年東京慈恵会医科大学卒。同大学付属柏病院、東京都立墨東病院、東京都保健医療公社豊島病院などを経て22年5月に四谷内科・内視鏡クリニック(新宿区)を開業。「胃がん大腸がんで亡くなる人をゼロに」をミッションに、人と人のつながりを大切にした、専門的で高度な医療を提供している。



【注】

 1. Klein AP. Pancreatic cancer epidemiology: understanding the role of lifestyle and inherited risk factors. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021 Jul;18(7):493-502.
https://www.nature.com/articles/s41575-021-00457-x

 2. 日本膵臓学会:膵癌診療ガイドライン
https://www.suizou.org/pdf/pancreatic_cancer_cpg-2022.pdf

  • 1
  • 2

【関連記事】


こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療