山高篤行 医師 (やまたかあつゆき)

順天堂大学医学部附属順天堂医院

東京都文京区本郷3-1-3

  • 小児外科・小児泌尿生殖器外科
  • 主任教授

小児外科 泌尿器科 外科

専門

小児外科、小児泌尿・生殖器外科を専門とし、特に小児鏡視下手術(腹腔鏡・胸腔鏡)、新生児外科、先天性胆道拡張症、Hirschsprung’s病などに精通。

山高篤行

小児外科及び小児内視鏡手術の国際的にも最高レベルの臨床医であり、教育者でもある。年間手術総数は約1,100例、新生児手術総数80例、鏡視下手術220例と日本で最多であり、かつ全国からの難症例を受け入れている同院の小児外科・小児泌尿生殖器外科の主任教授を務める。とくに「新生児小腸閉鎖、腹壁破裂」「尿道下裂」の手術では国内外から高い評価を受け、山高医師が独自に考案した外精筋膜を利用した尿道形成術は合併症が格段に少ないため、尿道下裂の手術書にも採用され、国際的にも高く評価されている。「この子が我が子なら」ということをつねに念頭において治療に当たり「幼弱な小児にこそ安全かつ侵襲の少ない治療」をと鏡視下手術に積極的に取り組んでいる。

診療内容

同科は1968年(昭和43年)4月、日本の医療機関の中で最初の小児外科講座として誕生して以来、国内・外で小児外科・小児泌尿生殖器治療のリーダーシップをとり続けている。
「患者さんの気持ちを考え、安全で確実な医療を提供する」ことをモットーに、主任教授である山高医師のもと、小児外科学会認定指導医・専門医の5名を含む合計20名のスタッフが、豊富な経験と優れた技術を用い、心を込めて安全・確実に治療することを使命として日々治療に当たっている。
同科は術後の痛みの軽減・早期回復を配慮した鏡視下手術(腹腔鏡・胸腔鏡)などの低侵襲医療外科治療において国際的にも群を抜いた存在であり、小児最先端外科医療の拠点としても国内外に知られている。
年間手術件数(全身麻酔下)は1,000~1,100例と全国平均の250例を大きく上回り、新生児外科症例数は70~110例(全国平均15例)と国内では最も多くの手術症例を経験し、小児外科病床数は45床と大学病院として日本最大規模である。日本でいち早く取り組んできた鏡視下手術(腹腔鏡・胸腔鏡)も180例とその症例数の多いことも同科の特徴である。同科の患者の約8割は全国の基幹病院や開業医、診療所等から紹介されてくる患者で、とくに小児外科においては、同院のように専門医や指導医が何人もいて設備の整った施設は極めて稀なため、外科疾患を持つ子供たちを一刻も早く治療するには「病病連携」「病診連携」などの医療連携が欠かせないという。救急患者に対しても全国でも類を見ない24時間体制で対応しており、夜間・休日・祭日は当直医の他に常勤指導医を含む4人が常時待機し、確実な診断・安全な治療を提供している。
2007年には小児外科・小児泌尿生殖器外科と、小児科・思春期科と産科の3科を中心にした「小児科・小児外科・周産期母子メディカルセンター(母子医育支援センター)を開設。小児科と産科との更なる協力体制のもと、患者の治療とその家族の支援に貢献している。
同科が扱う疾患は小児(新生児から中学生まで)の手術を必要とする疾患で、腹部消化器外科、頭頸部外科、肝・胆・膵外科、肺・縦隔外科、泌尿・生殖器外科、体表外科など多岐にわたり、心臓、脳、骨、眼を除く身体のほぼ全域を治療している。そうした幅広い分野にわたる治療は小児科・思春期科、産科だけでなく、脳神経外科、心臓血管外科、形成外科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸科各科との緊密な協力体制のもとに行われており、同院のスペシャリストの力が結集した高度なチーム医療が支えているといって過言ではない。そのチーム・リーダーである山高医師の治療方針は「この子が自分の子供なら、どのように診断し、いかなる手術を選択し、どのように術後管理を行うかを考えていく」ことであり、このことを常に念頭に治療に当たっている。我が子と思えば自ずとそこには必死さがあり、切実さ、真剣さが違ってくる。
命に向き合う姿勢はつねに真剣勝負である山高医師がとくに力を入れるのは鏡視下手術(腹腔鏡・胸腔鏡・後腹腔鏡、膀胱鏡など)である。鏡視下手術はこれまでの開腹・開胸手術に比べて手術のあとに残る傷が小さいこと、術後の痛みが軽いなど患者の身体的負担が少なく、回復も早いなど大きなメリットがあり、日本では1990年代から成人に対して急速に普及した。同科では「幼弱な小児にこそその低侵襲性であるというメリットが適応されるべき」という前教授である宮野武順天堂大学病院名誉教授の考え方から、他の施設に先駆けて鏡視下手術に積極的に取り組んできた。山高医師は宮野教授の意志を引き継ぎ、小児外科の種々の疾患に対して安心で安全な鏡視下手術を成功させており、その果たした功績は大きい。
山高医師は同院医学部の低侵襲外科学講座の統括推進指導医も務め、手術の際の侵襲をいかに低減するか、さらには痛みの軽減や傷跡を目立たなくする方法、術後の感染予防など幅広い研究を行い、患者の身体に負担の少ない治療法を日夜、徹底追求している。
とくに繊細な手術が要求される手術の1つに尿道形成術がある。主に尿道下裂等の疾患の治療法として用いられるが、非常に繊細な手術となるため、慎重にかつ丁寧に、そして熟練した小児外科医の技術が必要になる。かなりの頻度で術後合併症が起こるため、世界中の外科医が合併症を少なくする方法を考案しており、術式が200以上もある。山高医師は合併症も格段に少なく、予後も良好な新たな手術法を考案し、国際的にも高く評価されている。尿道下裂とは胎生期における前部尿道の形成不全によって生じ、外尿道口が正常位置より近位に開口する先天性尿道奇形である。基本的に尿道を形成する手術が必要となるが、山高医師が独自に考案した外精筋膜を利用した尿道形成術は尿道下裂の手術書にも採用され、内外の多くの医師から高い支持を得ている。
同科では他施設で手術をして合併症が生じている難症例に対しても再手術も行っている。また、膀胱尿管逆流症に関しても山高医師が中心となり、国内ではいち早く膀胱鏡手術法を採用している。現在、日本でもっとも多く行われている手術方法は「粘膜トンネル作成および尿道再移植術」で、開腹手術により膀胱を一旦開けて手術をするが、術後の膀胱の攣縮(spasm)による疼痛がしばしば問題となる。このため、欧米では「STING術」という膀胱鏡下での手術法が積極的に行われており、奏功率は70%から90%と通常の手術にやや劣るものの、患者の術後疼痛の軽減とともに、早期退院が出来るなどのメリットがある。日本でも近年、STING術に必要なデフラックスという薬の使用が許可されたことを契機に、同科では積極的に行っている。
同科では日帰り手術に関しても積極的に行っており、2歳以上の大きな既往症のない小児の鼠径ヘルニア(陰嚢水腫)手術を対象に行っている。手術や麻酔の方法をはじめ、それを行うスタッフも入院手術と同様に行われ、同科のスタッフはもとより麻酔科・ペインクリニック、外来、病棟、手術室の全員が患者が安全に、かつ安心して日帰り手術を受けられるよう常に万全の体制を整えている。
手術当日は患者や家族は小児病棟内の個室を使用でき(1日分の個室料金の費用がかかる)、入院したほうが安全と考えられる場合はすぐに入院に切り替えることもできる。帰宅後に問題が生じた場合にも直ちに同院で対応するシステムである。日帰り手術は土曜日(第2土曜日を除く)午前9時から行われ、手術日は外来にてあらかじめ決定する。
“小児にこそ必要な低侵襲で安全で安心な手術を“という同科の方針は細部にまで行き渡っており “体内に異物を残さない”ということもその1つである。
日本の施設では小腸や大腸腸管を処理する際に(止血目的で)絹糸(silk)を使用することが多いが、絹糸のような「溶けない糸」が原因で組織反応、異物反応を引き起こし術後感染症や肉芽組織形成による合併症等が報告されている。欧米では「手術部位感染防止ガイドライン (Guideline for prevention of surgical site infection)」に従い、極力「溶ける糸」が選択されている。
同科でも患者により良い医療を提供することを最優先に考え、特殊な手術を除き、ほとんどの手術に「溶ける糸」を用い、感染などのさまざまなリスク(膿瘍形成・肉芽形成等)を回避している。また、Ligasureなどのシーリングデバイス(凝固するための機械)を使用し、感染術野で糸を使用しないなどの方法も積極的にとられている。
同科では出生前診断された新生児外科疾患については、山高医師がセンター長を務める母子医育センター内に産科・小児外科・小児科(新生児科)が周産期チームをつくって母体と胎児を計画的に治療している。とくに横隔膜ヘルニアに関しては低侵襲性と美容性、将来の体の発達を考慮し内視鏡手術を適応している。横隔膜ヘルニアは胎児の段階で横隔膜の形成が不完全だったため、腸や胃や肝臓が胸の中に上がってきてしまう疾患である。そのために肺が十分に発達できないため、生まれた後に呼吸困難を起こしてしまうため、生まれると同時に治療を開始する必要がある。ただ、横隔膜ヘルニアの赤ちゃんは呼吸状態がとても不安定なので、すべての赤ちゃんに内視鏡手術が行えるわけではない。そこで山高医師が中心になって日本はもとより、世界に先駆けて出生前診断を受けた横隔膜ヘルニアの赤ちゃんへの内視鏡手術の適応基準(適応基準、成績については英文医学雑誌に発表 Okazaki T, Yamataka A, et al: Pediatric Surgery International 27:35-38, 2011)をつくり、その基準に則り、安全な治療を行っている。特殊な人工呼吸器や吸入薬(一酸化窒素)を使用するきわめて専門的な治療になるが、同センターでは日本でも最高水準の治療設備環境のもと、低侵襲医療外科治療における卓越した技能を持った医師とスタッフにより安心で安全な手術が実現している。山高医師は優れた教育者としても知られ、後進の育成にも心血を注いでいる。「私は順天堂で外科のトレーニングを受け、外科医になりました。ですから、順天堂でどのようなトレーニングを受けて、どのように勉強すれば、実力ある真の小児外科医になれるかを知っている指導者です。日本国のみならずアジア、世界のために小児を手術でしっかりと治療できる力のある小児外科医育成が私の責務と考えております」(山高医師)
小児、とくに新生児は臓器の形態・発達などが大人とは大きく異なるため、小児外科医には小児の外科疾患に対する極めて専門的な知識や経験が要求される。それだけでなく、ほとんどの臓器を扱っているため、全身管理が習得できるというメリットがある。小児外科医を目指すことは、その専門性のみを追求するのではなく「Primary care(特定の病気だけでなく、患者1人を総合的に診療する総合的に診る医療)を学ぶことにほかならないと山高医師は言う。同科は日本で最も症例数が多く、多くの経験を積めるという点で最適の現場だといえる。
「百聞は一見に如かず」で山高医師は大学院生、研修医、そして医学部学生に対して定期的に、実際に動物を用いた鏡視下手術(胸腔鏡・腹腔鏡)の手術手技トレーニングを行って、低侵襲手術に対する理解を深める機会としている。こうした外科手術手技習得のための厳しい診療修練を行う一方で、よりグローバルな視野で医療が行えるよう海外留学を積極的に奨励している。“医局員が海外留学を通して世界を肌で感じ取ることが出来ること”は同教室の魅力の1つである。ほぼ全員が留学経験者であり、その国際医学情報をもとに、世界レベルの診療・教育・研究を絶えず維持している。山高医師自身は外科の開業医である父を持ち、自らも医師を目指し順天堂大学医学部に入学、大学時代はラグビーに没頭する。当時のラグビー部の監督は小児外科の2代目の教授(当時は講師)である宮野武名誉教授で、ラグビーはもとより、人間性、そして外科道の厳しさをとことん叩き込まれたという。
「ラグビーも手術も追求する姿勢に妥協はない」という監督の言葉に感銘を受け、小児外科を目指すことを心に決めたという。山高医師率いる同科は専門医、指導医の数とその医療水準のレベルでは超高度の技能集団であり、一滴の水をもらさぬチームワークを実現している点でラグビーと相通じる部分があるのかもしれない。
「優れた外科医は人には真似のできない自分の型を持っているものです。それは一朝一夕には身に付かず、日々の努力の果てにいつしか自分のものとなっているといったたぐいのものです。そんな優れた医師になるにはとにかく一歩一歩、小さなことを積み上げ、不断前進していくのみです。厳しい道ではありますが、今の若者たちもしっかりとした教育を提供すれば、十分に応えてくれます」(山高医師)
順天堂の学是は「仁」であり、それは「人ありて我々あり、他を思いやり、慈しむ心」を意味する。170年にわたり連綿と受け継がれてきた順天堂の伝統の力が、若い医局員たちの大きな励みともなっているという。そうした次代を担う若いの医師たちの一隅を照らす存在になれればうれしいと山高医師は語る。
「医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれが好まぬなら、他の職業を選ぶがよい」──。近代西洋医学教養の父ドクターポンペ ファン メールデルフォールトの言葉だが、山高医師は今もこの言葉を心に刻んで外科道にチャレンジし続けている。

医師プロフィール

1985年3月 順天堂大学医学部卒業
1985年6月 順天堂大学医学部附属順天堂医院外科研修医
1987年6月 順天堂大学医学部附属順天堂医院小児外科助手
1990年2月 英国Liverpool王立子供病院留学
1991年2月 英国London Great Ormond子供病院留学
1991年8月 豪州Brisbane王立子供病院及びPrincess Alexandra 病院留学
1992年3月 順天堂大学医学部附属順天堂医院助手
1993年1月 順天堂大学にて医学博士の学位授与
1993年10月 日本小児外科学会認定専門医
1994年7月 獨協医科大学第一外科講座助手
1995年7月 順天堂大学医学部小児外科学講座臨床講師
1996年3月 ニュージーランドOtago大学付属Wellington病院小児外科留学
1997年1月 順天堂大学医学部小児外科学講座講師
1997年12月 日本外科学会認定医
1999年1月 順天堂大学医学部小児外科学講座助教授
2000年10月 日本小児外科学会指導医
2004年4月 日本小児外科学会専門医
2004年12月 日本外科学会指導医
2006年8月 順天堂大学医学部小児外科学講座主任教授
2005年1月 日本小児外科学会指導医更新
2005年12月 日本外科学会専門医
2009年1月 日本内視鏡外科学会技術認定医
2009年4月 日本小児外科学会指導医更新
2009年4月 日本小児泌尿器科学会認定医
2009年12月 日本外科学会指導医更新
2011年8月 臨床修練指導医
2012年8月  日本がん治療認定医機構暫定教育医
2012年12月 東京医科大学消化器・小児外科学分野兼任教授
2013年4月 日本小児血液・がん学会小児がん認定外科医