岩田広治 医師 (いわたひろじ)

愛知県がんセンター中央病院

愛知県名古屋市千種区鹿子殿1-1

  • 乳腺科部
  • 副院長
  • 部長

乳腺・内分泌外科 外科 がん

専門

乳がんの診断と治療

岩田広治

日本の乳がん治療のオピニオンリーダーにして東海地区の乳がん治療の要。診断から初期治療、再発治療、緩和医療まで幅広く一貫した治療を行っている。センチネルリンパ節生検を日本でいち早く取り入れるなど患者に負担の少ない手術をめざす。また薬物治療では現在の最先端の治療を提供することを第一に、世界規模の臨床試験にも数多く参加。新規薬剤をいち早く患者に届けている。再発から緩和医療でも、個々の事情に合わせ、院内のさまざまな科から構成される乳がんチームがサポートしている。

診療内容

乳がんは女性に多いがんの第4位であるが、30歳から65歳までの年齢層に限れば、第1位である。患者は年々増加の傾向にあり、年間5万人を越える。欧米と異なり、死亡数も増加している。「乳がんは乳房にある乳管や小葉という部位の細胞ががん化したものです。当院では乳房に関しての自覚症状がある方や、他院で診断が付かない場合の診断と、乳がんと診断された方の治療を行っています。また進行がんや再発した乳がんの治療も積極的に行っています」と岩田医師は話す。
診断に際しては、さまざまな検査を行う。初診で訪れた人はすべて問診と触診の後、乳房のレントゲン写真(マンモグラフィ)を撮る。気になるところがあれば、各診察室に備え付けられた超音波診断装置(エコー)で確認。触診でもわからないような小さなしこりについては、超音波で確認をしながら細胞を細い針で取ってくる穿刺吸引細胞診を行う。「マンモグラフィの石灰化のみで病変が指摘できるものに対しては、ステレオガイド下マンモトーム生検という検査を行います。これは特殊な器械で病変の位置を正確に測定して非常に小さな傷から周囲の組織を含めて採取し、診断をする方法です。当院では現在までに1,000例を越える患者さんに行い、正確な診断を得ています」また、乳房からの分泌液を気にする人には乳管内を精査する乳管造影検査を積極的に行っている(予約制)。「最近は、治療方針決定の為に乳がんのサブタイプを調べることが極めて重要であり、超音波下マンモトーム生検という、太い針で組織の一部を採取してがんの診断と同時にサブタイプを調べる検査を行うことが多くなりました」と岩田医師は言う。
乳がんの主な治療法としては、手術、薬物、放射線の3種類があるが、がんの0期からⅢ期までほとんどの患者には手術療法がとられる。「手術には乳房切除術(全摘)と乳房温存術があり、どちらを選ぶかはがんの大きさ、広がり、数、位置、リンパ節転移などさまざまな要因が関係してきます。私たちの乳がんの手術に対する考え方は、術前の画像診断でがんの範囲をできるだけ正確に把握してがんをすべて取りきることです。もしも乳房を残して(美しい乳房が残せて)がんが完全にとりきれると判断すれば、乳房温存療法をお勧めしています。しかし、がんが広範囲に広がっている場合には乳房切除術を行っています。しこりが大きくて温存療法の適応にならない方で、どうしても乳房温存術を希望される方には、術前化学療法や術前ホルモン療法によってがんを縮小させてから温存術を行なう方法もあります。ただ、病巣を部分切除し、乳房を温存した場合、美容的に優れますが、目に見えないがん細胞が残っていると再発したり、転移する可能性があります。手術法を選択するときは主治医によくご相談ください」と岩田医師。前述のセンチネルリンパ節生検は、手術中に腋のリンパ節に乳がん細胞の転移がないか調べる検査で、センチネルリンパ節は乳腺から流出したリンパ液が一番最初に入り込むリンパ節のこと。これまでは転移のリスクを避けるため、手術時にリンパ節切除を行っていたが、この検査で転移がなければ、リンパ節を全部切除せずにすむようになった。さらに最近では、どうしても乳房を全摘しなくてはならない場合でも、同時に形成外科による乳房再建手術を行っている。「乳房再建には人工物を用いるインプラントと患者さん自身の自家組織を移植する方法があり、現在は美容面からも満足できる乳房をつくることができるようになっています」とのこと。
手術後は、薬物治療や放射線治療で徹底的にがん細胞をたたき、再発を防ぐ。「薬物にはホルモン剤、抗がん剤、分子標的治療薬(がん細胞の特定の分子を標的とし作用を抑える薬)があります。当院では現在得られる最新の情報をもとに最善・最新の治療をすべての患者さんに提供しています。治療法の不明確なグループに属する患者さんには臨床試験への積極的な参加もお願いしています。また現在では、治療の順番も乳がんのサブタイプによって選択する時代になってきました。手術先行か薬物療法(抗がん剤あるいはホルモン剤)先行かをサブタイプに基づいて検討しなくてはいけません」(岩田医師)
手を尽くした治療を行っても、術後にがんが別の臓器に再発する場合もある。「その場合、大切なのは患者さんのQOL(生活の質)を落とさずに長期間の生存を得ることです。当院では放射線治療部・診断部、整形外科、脳外科などさまざまな科と連携をとって、それぞれの患者さんにとって最適な治療法をとるようにしています」と岩田医師は話している。

医師プロフィール

1987年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
1987年 同学部第二外科助手、関連施設での研修の後
1991年7月 名古屋市立大学第2外科臨床研究医
1994年5月 三重県国保前島病院 外科医員
1996年12月 名古屋市立大学医学部第2外科助手
1998年4月 愛知県がんセンター乳腺外科医長
2003年4月 同乳腺外科部長
2005年4月 愛知県がんセンター中央病院乳腺科部長(施設名称変更)
2012年4月 同副院長兼乳腺科部長