武井寛幸 医師 (たけいひろゆき)

日本医科大学付属病院

東京都文京区千駄木1-1-5

  • 乳腺科
  • 部長

乳腺・内分泌外科 外科 がん

専門

乳がんの診断と治療

武井寛幸

乳がん治療の名医、さらには“名医が選ぶ名医”として取り上げられることもあり、年間400症例を超える乳がん手術を担当する乳腺外科チームを率いてきた。高い治療技術もさることながら「患者にやさしい医師」であるとして信頼を寄せる患者も多い。患者にとって最適な治療を行うことをモットーとし、その人に合わせたテーラーメイドの医療をめざしている。日本乳癌学会による「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」作成小委員会では外科療法担当メンバーも務めてきた。

診療内容

検査方法や手術方法が大きく変わりつつある乳がん。乳がん治療の名医として知られる武井医師はこの進歩についてこう語る。「乳がんの手術にはすでに100年以上もの歴史があります。手術だけに頼る時代から、現在では薬物療法、放射線治療も含めて大きく治療法が進歩してきました。従来は乳房切除術に加え内胸、鎖骨上リンパ節郭清に代表されるように“大きく切除する”というのが望ましいと考えられてきました。しかし、その後は放射線療法と組み合わせながら行う乳房温存術がスタートし、現在ではセンチネルリンパ節生検によって腋窩リンパ節郭清が省略されるようになり、乳がんの外科手術は大幅に変わってきたと言えます。このような手術の縮小化には最新の薬物療法がしっかり行われるようになったことが大きいと考えられます。さらに、乳房再建手術には乳房温存術にはないメリットがあり、各々の患者さんに適した手術法を選択することができるようになりました」
センチネルリンパ節生検とは、乳がんが転移しやすいセンチネルリンパ節(脇の下にあり、がん細胞が最初に到達するリンパ節)を摘出して病理検査を行うことで、このセンチネルリンパ節にがんが認められなければ、脇の下のリンパ節郭清を回避できるという検査である。同センターは国内有数の乳がん治療施設であり、全国で10指に入るほどの乳がん治療の実績をもつ病院として知られ、センチネルリンパ節生検にはかなり早い時期から(1998年~)取り組んできた。乳房温存率、センチネルリンパ節生検件数においては全国でトップクラスの実績を誇り、現在では同センターで腋窩リンパ節郭清を受ける患者は3割程度にとどまるという。
乳房のすべてを切除せず温存できるというのは患者にとってもちろん嬉しい進歩だが、そこで気になるのは「再発率が高くないのだろうか?」という点だろう。これに対し武井医師は「乳房温存率が高いこと=最善の治療とは言えない」と語る。施設が公表する乳房温存率だけでは、その施設の乳房再建術数、術後の乳房の状態(整容性)、再発率まではわからないからだ。こうした術後のことについては、医師とじっくり話し合って確認し、納得して手術に臨むことが欠かせない。ちなみに同センターでは乳房温存療法後10年の累積乳房内再発率は約4%と良好な成績を得ているという。乳房温存療法の成績は、乳腺外科による手術だけでなく、画像診断(マンモグラフィ、超音波、MRIなど)、病理診断、放射線治療、内科的薬物治療といった他診療科とのチームワークで生まれた結果でもある。一方、近年では乳房温存術は少なくなってきている。これに代わり、乳房切除術+同時乳房再建手術が多く行われるようになった。いずれにしてもこれら治療は各々の患者さんにとって最適と考えられるものであり、すべてチーム医療の賜物である。
乳がん治療の方向性について武井医師はこう話す。「過去の乳がんの治療は主に進行度によって決まっていました。しかし近年、進行度に加えてがんの性質が重要と考えられるようになりました。当然ながら進行した乳がんでは、外科治療、薬物治療、放射線治療のすべてが必要となります。一方、早期乳がんであっても、ホルモン療法や化学療法が効くと考えられる性質の乳がんでは、その性質にあった薬物治療が必要となります。リンパ節に転移があるか否かを確実に診断し、さらにがんの乳房内の広がりを確実に診断することで、最適な手術術式を選ぶことができます。このように各々の患者さんにとって最適な治療が行われる時代になってきたと実感します」武井医師のめざす患者個々に合わせたテーラーメイド医療の実現に今後も期待したい。

医師プロフィール

1986年3月 自治医科大学 卒業
1994年6月 群馬大学医学部第二外科助手
1997年10月 米国ノースウエスタン大学医学部がんセンター留学
2001年7月 埼玉県立がんセンター医長
2008年4月 同科長兼部長
2013年4月 日本医科大学大学院 乳腺外科教授・日本医科大学付属病院 乳腺科部長