意識障害とは 家庭の医学

 意識障害とは意識レベルが低下している状態です。意識レベルを評価する方法としてJCS(Japan Coma Scale)があります。これは簡単にいえば、刺激(呼びかけたり、肩をゆさぶったり)しなくても目をあけていれば1ケタ、刺激すれば目をあけるのが2ケタ、刺激しても(大声で呼びかけても、肩をゆさぶっても、なにしても)目をあけないのは3ケタと表現します。

 JCSが1ケタ(0~3)でも自分の氏名や生年月日がいえない場合(3)や2ケタ(10~30)は、すぐに医療機関へ連れていきましょう。また、JCSが3ケタ(100~300)はたいへん重篤な状態です。大至急、救急車で救急病院へ運んでもらいましょう。

■現場で大切なこと
 1.意識レベルの程度の確認――JCSで1ケタか、2ケタか、3ケタか。
 2.呼吸・循環の確認――息をしているか、脈は触れるか。
 3.回復体位にすること――意識障害があると、嘔吐し、吐いた物をのどや気管につまらせてしまうこと(気道閉塞)が、よくみられます。JCSが2ケタ以上の意識障害の人、および寝たきり状態の人は、嘔吐しても大事にいたらないように回復体位にしてあげましょう。
 なお、救護場所が戸外やビル内であった場合、路面やコンクリート床に直接傷病者を寝かせて回復体位をとらせると、救急車到着までに地面や床に体温がうばわれ体力消耗を招きやすくなります。この場合は、新聞紙やビニール、衣類などを傷病者の下に敷いて体温低下を防止してください。

●よくみられる意識障害と原因の状況、現場での応急処置
〈原 因〉〈よくみられる状況・注意点〉〈現場での応急処置〉
頭部障害階段・高所からの転落、交通事故。最初は意識がハッキリ(意識清明)していても、数十分~数時間後に意識障害をきたす場合がある救急車を呼ぶ
体位は半坐位とし、嘔吐したときは横を向かせ吐かせる



急性アルコール中毒飲酒時・飲酒後回復体位にして救急車を呼ぶ。呼吸停止のとき人工呼吸をおこなう
酒の一気飲みは厳禁
一酸化炭素中毒家事、家屋内、排気ガス
自殺を図ったとき
新鮮な空気の吸える場所に移動させ、救急車を呼ぶ
薬物中毒農薬散布、自殺回復体位にし救急車を呼ぶ。救護者の皮膚についた農薬で救護者が中毒になる場合があるので、傷病者に触れる場合は必ずビニール手袋をする
熱中症夏季に戸外での作業・運動。高温多湿の屋内でも生じうる(体育館、車の中など)
熱中症には熱疲労、熱けいれん、熱射病があるが、緊急の対処を必要とするのは熱射病
皮膚が燃えるように熱く、かつ汗をかいていない場合は熱射病ですから、救急車を呼ぶと同時に、涼しい場所に移動させ、からだを冷やします。冷やしかたは、まず服をぬがせ、氷枕や濡れタオルでからだをおおい、扇風機やうちわであおぐのが効果的
脳卒中持病(高血圧、心臓病)のある人、中年~高齢者に多い回復体位にして救急車を呼ぶ
肝性昏睡肝硬変のある人。手指のふるえを伴う場合がある(羽ばたき振戦)回復体位にして救急車を呼ぶ
糖尿病昏睡糖尿病のある人。血糖値が高い(高血糖)昏睡も、血糖値が低い(低血糖発作)昏睡もありうるが、低血糖発作では死亡することがあるので注意回復体位にして、可能ならば甘いジュースを飲ませたり、砂糖をなめさせる


(執筆・監修:社会医療法人恵生会 黒須病院 内科 河野 正樹)