卵巣嚢腫〔らんそうのうしゅ〕 家庭の医学

 卵巣には、多くの種類の良性腫瘍と悪性腫瘍が発生します。卵巣嚢腫とは、おおまかな形態からつけた名称で、一般にやわらかいふくろ状の腫瘍を呼びます。かたく、中がつまっているような腫瘍は悪性のものが多いのに対し、卵巣嚢腫は一般的に悪性のものではありません。ただし、最終的な良性、悪性の診断は摘出した組織の病理学的検査によります。
 良性の卵巣嚢腫の代表的なものとして、単純性嚢腫(内容が水様)、成熟嚢胞性奇形腫/皮様嚢腫(内容が脂肪、毛髪、歯など)があります。なお、子宮内膜症性卵巣嚢胞/チョコレート嚢胞(内容が古い血液)は、腫瘍ではなく卵巣嚢腫ではありません。

[症状]
 小さいものでは自覚症状があることは少なく、大きくなってはじめて腹部膨満(ぼうまん)で気がつきます。また、下腹部痛、不正出血、月経異常などの非特異的な症状で婦人科を受診して発見されることも少なくありません。さらに、卵巣嚢腫の茎がねじれると(茎捻転〈けいねんてん〉)、激痛をうったえます。

[診断]
 診断は内診と画像診断が中心です。画像診断としては超音波(エコー)、MRI(磁気共鳴画像法)、CT(コンピュータ断層撮影)があり、良性・悪性の鑑別には造影剤を使用すると診断精度があがります。また、血液中の各種腫瘍マーカーの数値も良性・悪性の鑑別に役立ちます。

[治療]
 小さなものでは経過を観察することも可能ですが、通常、自然となくなることはなく、茎捻転、がん化、破裂などのリスクがありますので手術が望ましいです。手術は卵巣全部を摘出する方法と、卵巣の正常な部分を温存する方法があります。
 良性の場合は、おなかを切らずに、小さな穴をあけるだけ(腹腔鏡下〈ふくくうきょうか〉手術)で手術ができることが多いです。

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