注意欠如・多動性障害(ADHD)〔ちゅういけつじょ・たどうせいしょうがい(ADHD)〕 家庭の医学

 注意欠如・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)は以前、微細脳症候群と呼ばれたことがあります。幼稚園から小学校低学年ころにかけて出てくるもので、男子に多いことがわかっています。小学校低学年では、各クラスに1人はいるといわれているくらい多いものです。
 原因は不明ですが脳になんらかの機能障害があると考えられています。
 症状は、不注意、多動、衝動性の3つの領域に分けられます。不注意とは学校や家庭生活で支障をきたすほどの不注意で、勉強、作業、遊びに集中できない、指示に従えない、途中でやめる、大事な勉強道具をよくなくすなどがあります。
 多動には、授業中じっとしていない、遊んでいても騒々しい、よくしゃべるといったことなどがあります。衝動性とは、順番を待てない、他人の遊びや会話に割り込む、無遠慮であるなどです。多動と衝動性がなく不注意だけのときは注意欠如障害で、すべての症状がみられるときは多動性障害と呼ばれます。
 これらの障害では、本来言語、運動、社会的発達の遅れはありませんが、症状が強くて学習に支障が出る場合があります。児童生徒一人一人の特性を把握し個々のニーズに合わせたしつけや教育をおこない、表面の行動を叱ったりするのではなく、周りとうまくやっていくための行動を穏やかに教示することが大切です。薬物療法としてメチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン、リスデキサンフェタミンがあります。

【参照】子どもの病気:注意欠如・多動症

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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