パラノイア〔ぱらのいあ〕 家庭の医学

 統合失調症に近い病気で、特定の妄想をもっている以外はなんの異常もみられない状態をいいます。つまり、妄想はもっていても、そのことに触れなければ人とのコミュニケーションは正常であり、行動面の問題もありません。
 妄想には、迫害妄想、宗教妄想、血統妄想、恋愛妄想などがあります。妄想に反対するものに対して立ち向かうという特徴があります。自分の権利が侵害されたと信じ込み、執拗に相手をうったえるというのが一例です。パラノイアはまれな病気と考えられていました。しかし、諸事件を起こしたオウム真理教の麻原教祖が、宗教妄想や迫害妄想をもったパラノイアではないかといった論調がみられたりしました。
 またストーカーが社会の注目を浴びていますが、そのような人のなかには、恋愛妄想をもったパラノイアが含まれているという見解もあります。このように、パラノイアの概念が新たに注目されています。
 パラノイアという用語は以上のような学問的意味をもっていますが、いまでは小説の題材や歌の題名によく使われたりしています。そこでは、必ずしも病的、否定的な意味あいで使われているわけでもないようです。このことばが今後どのように使用され、社会的に認知されていくのかが注目されます。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)