耳管狭窄症〔じかんきょうさくしょう〕 家庭の医学

 耳管は、中耳腔(ちゅうじくう)と鼻の奥の上咽頭(じょういんとう)をつなぐ管のことで、中耳腔の空気の換気により、中耳圧を外界の大気圧と同等に保つ役目をしています。この管は通常は閉じており、つばを飲み込んだときなどに開いて、そのときに空気が入れ替えられます。中耳腔は鼓膜と内耳の間にある空間で、耳小骨(じしょうこつ)が存在しますが、鼓膜と耳小骨は音を大きく増幅する機能をもっています。
 耳管狭窄症では、かぜや中耳炎などで粘膜が腫脹して耳管がさらに狭くなって換気ができにくくなり、聞こえがわるくなります。

[治療]
 耳管カテーテル法で強制的に中耳に空気を送る処置をおこないます。軽度の場合には自分で耳抜きをすることも可能です。バルサルバ(Valsalva)法といい、ダイビングのときなどにおこなうものと同じです。自己耳管通気器具を用いて耳管を開く方法や狭窄部を拡張するバルーンカテーテル治療もおこなわれています。耳管狭窄症では通気のほか、炎症をとるための薬剤療法もおこないます。悪化して中耳腔に貯留液がたまる場合(滲出〈しんしゅつ〉性中耳炎)には、鼓膜切開などもおこないます。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔耳鼻咽喉科・頭頸部外科〕 山岨 達也
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