胸部超音波検査 家庭の医学

 胸部超音波検査を用いて胸膜直下の肺がん病変や縦郭腫瘍、胸水などの観察対象病変が胸膜に接する位置にあれば、病変を描出することが可能となります。また、超音波検査では、高い画像分解能のために、腫瘍の胸膜浸潤の評価もできます。
 いっぽう、超音波の特性として、骨に対しては、まったく反射波が到達せず、骨の直下の病変の描出は不可能となります。また、超音波は空気に対しては全反射する性質があります。したがって、胸膜に接しない肺内病変は、含気を有する肺が介在するため、病変を描出することができません。

 超音波ガイド下穿刺(せんし)では、刺入時に針先を超音波モニターで確認できるため、周囲臓器や脈管系の損傷を回避することができ、より安全な採取が可能となります。対象部位は、胸壁、胸膜、胸水、心嚢水(しんのうすい)、胸膜に接する肺内病変や縦郭病変、表在リンパ節など、多岐にわたり、病理診断のための検査法として有用です。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 准教授〔呼吸器内科学〕 十合 晋作)