ツベルクリン検査・インターフェロンγ遊離試験(IGRA) 家庭の医学

 ツベルクリン検査は、結核菌の培養液を精製したツベルクリン(PPD:purified protein derivative)を皮内に少量接種し、48時間後に皮膚反応の程度(発赤、硬結の大きさ)を観察して判定する検査です。発赤の大きさが10mm以上で陽性、10mm未満で陰性と判定します。陽性は、過去に結核菌が体内に侵入したことを示しており、必ずしも検査時点で結核感染が生じていることを示すものではありません。しかし健康時におこなったツベルクリン検査の反応と比較して、はるかに強い反応がみられた場合には結核菌による新たな感染を疑います。
 また、ツベルクリン反応は、BCG接種により陽性となることが知られています。そのため、ツベルクリン検査だけで結核の感染とBCG接種の影響を判断することは困難です。いっぽう、ツベルクリン反応は、PPDに対するアレルギー反応(遅延型過敏反応)で、免疫能が低下してアレルギー反応が出にくい場合には陰性となる可能性があります。重篤な慢性疾患、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の使用、ウイルス感染などで陰性化するので、それまで陽性であったのが、陰性化した場合には、その原因を調べる必要があります。
 近年、ツベルクリン検査に代わり用いられる検査としてインターフェロンγ遊離試験(IGRA:Interferon-Gamma Release Assays)があります。結核菌の一部の成分を患者自身の血液とまぜあわせて、炎症指摘の指標であるインターフェロンγ(IFN-γ)を測定するものです。IGRAにはQFT法(QuantiFeron)とELISPOT法(Enzyme-Linked ImmunoSpot)があり、前者は産生されたIFN-γ自体を測定し、後者はIFN-γを産生したTリンパ球の細胞数をカウントしています。BCG接種の影響を受けないことや、検査の精度が高いことから広く使用されています。
 しかし、ツベルクリン検査と同様に、IGRAが陽性であっても、必ずしも結核の発症を意味しているわけではありません。結核の既感染者や一部の非結核性抗酸菌感染症でも陽性になることが知られています。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 准教授〔呼吸器内科学〕 十合 晋作)