腹壁・陰嚢のおもな病気

 腹壁の筋層は正面正中部と側腹部とで構造が異なります。腹壁正面は、左右2葉の腹直筋という細長い筋肉が縦にはしっており、その中央の連結部(白線)で連なっています。
 いっぽう、左右側壁はそれぞれ外側から内側に向かって外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋という3層の筋肉よりなっています。腹横筋の内側は横筋筋膜という強靱な膜で裏打ちされ、さらに腹膜という薄い膜が重なって腹腔(ふくくう)を形成しています。

 生まれつき臍帯(さいたい:へその緒)のすぐそばに孔(あな)があいていて、そこから腸管が腹壁外へとび出しているのが、先天性腹壁破裂と呼ばれる病気です。妊娠中に腹部超音波(エコー)検査をおこない、その結果によってあらかじめ診断がつきますので、産科医により娩出(べんしゅつ)されると同時に、分娩(ぶんべん)台の隣の手術台で待機していた小児外科医チームによりただちに脱出腸管を腹腔内に戻す手術がおこなわれます。
 腹部の皮膚の病気もありますが、ほかの場所の皮膚の病気と変わりはありません。
 腹壁皮膚の静脈が蛇行して盛り上がり、へそを中心として放射状にヘビがはっているような外観を呈する場合、肝臓の病気、特に肝硬変が疑われます。肝硬変により肝臓の中をはしる肝静脈への血液の流れがとどこおり、臍部の臍傍(さいぼう)静脈から皮下をはしる細い静脈内へ多量の血液が流れ込んで心臓へ向かうからです。
 良性の腹壁腫瘤(しゅりゅう:しこり)がまれにみられます。そのうちデスモイドといって、線維性のかたいしこりが腹壁の筋膜から発生することがありますが、これは良性腫瘍です。
 まれに腹腔内の胃がん、結腸がんなどが腹壁へ転移することがあります。小児でも、神経芽細胞腫という小児特有のがんが皮膚に転移してしこりをつくることがあります。