咬傷〔こうしょう〕
■動物などの咬傷・ひっかき傷について
動物に咬まれた場合、傷口を流水で十分洗い、ただちに医療機関を受診してください。特に、野生の動物や野生化した動物に咬まれたときや、蛇などの毒を持つ可能性のある動物に咬まれたときには、ためらわずに救急車を呼び医療機関に行きましょう。
最近のペットブームによりペット数の増加で、基礎疾患を持った高齢者が動物咬傷を受傷する機会は多くなり、咬傷感染症が増加すると考えられます。動物に咬まれた場合は、重症化の可能性があることを十分に注意しておきましょう。
咬傷はイヌによるものが8割以上、次いでネコが約1割との報告があります。
動物に咬まれるとその牙により鋭く深い傷ができ、強い力も加わって周囲の正常組織が挫滅(ざめつ)します。また咬まれた瞬間、腕を振りほどき、皮膚が剥離することもあります。動物だけでなく、人間も口の中に数多くの細菌が存在します。
傷が深いと容易に感染を起こします。多くは脂肪組織までの感染症(蜂巣炎〈ほうそうえん〉)にとどまりますが、筋肉まで達すると、感染症としての壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)や敗血症性ショック(細菌が全身に回り、命の危険を伴う状態)に陥る場合もあります。
イヌ咬傷は、ネコに比べ約10倍と多いといわれていますが、ネコ咬傷による感染症はイヌに比べて約10倍多いです(日本の飼い犬数は、飼い猫数の1.2倍で大差はありません)。ネコ咬傷による感染症が多い理由は、ネコの牙が細く鋭いため、傷口は小さいものの深い傷からと考えられています。ネコの口の中が汚れているからではありません。
医療機関受診で、①イヌやネコなどの咬んだ動物など、②受傷時間(経過時間)、③受傷者の基礎疾患(糖尿病・血流障害など、および使用薬剤)、④受傷者の破傷風ワクチンの有無)が重要な病歴です。
治療は創部の十分な洗浄をおこない、①傷の評価、②十分な処置(切開、異物除去など)、③一時縫合するか否かの判断、④予防的抗菌薬投与の適応と選択、⑤破傷風および狂犬病予防の適応の判断をおこないます。
口の中には一般的な細菌のほかに、嫌気性菌(酸素がなくても発育する細菌)も多く、有効な抗菌薬を投与します。破傷風ワクチンを10年以上接種していない人や接種不明の人には、破傷風のトキソイドや免疫グロブリンという注射をすることもあります。
また、かき傷などから感染することもありますので、ペットの爪切りや爪カバー装着をおこなうことも一つの方法です。接触後に手洗い・うがいをおこなうことも大切です。
咬傷では、一般に抗生物質が使用されます。動物が持っている黄色ブドウ球菌や溶連菌、パスツレラ菌に対して使用します。
□パスツレラ菌
パスツレラ症はネコやイヌに引っかかれた傷や咬まれた傷から、その動物の口内のパスツレラ菌により感染症を起こすものです。咬まれたり引っかかれたりしてから約30分~数時間後に、激痛を伴う腫脹と浸出液が排出され、頸部のリンパ節の痛み・腫れ、発熱などの症状が起こります。
抗生物質を使用しなくても6~12週間で治ることがありますが、糖尿病や呼吸器疾患を持った人は、肺炎を起こすなど重症化することもあるので注意が必要です。
□狂犬病について
狂犬病にかかった動物(アジアでは、おもにイヌ)に咬まれた部位から、唾液内のウイルスが侵入して感染します。通常、ヒトからヒトに感染することはなく、感染した患者から感染が拡大することはありません。日本では狂犬病予防法により、イヌに年1回の予防接種が義務づけられています。
近年、国内発生がなく、特別な事情がないかぎり狂犬病のワクチンは使用しません。海外ではむやみに動物に触らないこと(特にアジア地域)や、狂犬病の流行国でイヌに接する機会がある場合、渡航前にワクチンを接種しておくことも必要です。
□破傷風について
動物咬傷の場合、破傷風の予防を考える必要があります。破傷風の予防のためには破傷風トキソイド、抗破傷風免疫ヒトグロブリンを投与し、毒素による発病を防ぐことができます。
破傷風トキソイドは、過去10年以上接種歴がない場合に接種を要するとされています。1968年以前生まれなどまったく接種がない人は、受傷直後・1カ月後・6カ月後の3回接種をおこないます。その後は10年おきに1回接種します。1968年より後に生まれた人は定期接種が始まっており、1回接種したあとは10年おきに接種します。
特に60歳以上の人に破傷風が発生しています。傷の汚染の度合いによって、5年以内でも、トキソイドや抗破傷風ヒト免疫グロブリン(テタノブリン-IH)を注射することもあります。
■ヘビ咬傷
ヘビに咬まれた場合、毒素が体に回らないように、落ち着くことです。興奮せずに、走らないでゆっくりと歩くようにし落ち着いて行動することが大切です。
■ヒト咬傷
ヒトに咬まれた場合、そのままにしておくと1週間ぐらいで、腫れ、熱があり、臭い液がでて膿むことがあります。原因は歯周病菌が多いです。
また、ウイルス肝炎やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することもありますので、咬まれたら受診しましょう。
動物に咬まれた場合、傷口を流水で十分洗い、ただちに医療機関を受診してください。特に、野生の動物や野生化した動物に咬まれたときや、蛇などの毒を持つ可能性のある動物に咬まれたときには、ためらわずに救急車を呼び医療機関に行きましょう。
最近のペットブームによりペット数の増加で、基礎疾患を持った高齢者が動物咬傷を受傷する機会は多くなり、咬傷感染症が増加すると考えられます。動物に咬まれた場合は、重症化の可能性があることを十分に注意しておきましょう。
咬傷はイヌによるものが8割以上、次いでネコが約1割との報告があります。
動物に咬まれるとその牙により鋭く深い傷ができ、強い力も加わって周囲の正常組織が挫滅(ざめつ)します。また咬まれた瞬間、腕を振りほどき、皮膚が剥離することもあります。動物だけでなく、人間も口の中に数多くの細菌が存在します。
傷が深いと容易に感染を起こします。多くは脂肪組織までの感染症(蜂巣炎〈ほうそうえん〉)にとどまりますが、筋肉まで達すると、感染症としての壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)や敗血症性ショック(細菌が全身に回り、命の危険を伴う状態)に陥る場合もあります。
イヌ咬傷は、ネコに比べ約10倍と多いといわれていますが、ネコ咬傷による感染症はイヌに比べて約10倍多いです(日本の飼い犬数は、飼い猫数の1.2倍で大差はありません)。ネコ咬傷による感染症が多い理由は、ネコの牙が細く鋭いため、傷口は小さいものの深い傷からと考えられています。ネコの口の中が汚れているからではありません。
医療機関受診で、①イヌやネコなどの咬んだ動物など、②受傷時間(経過時間)、③受傷者の基礎疾患(糖尿病・血流障害など、および使用薬剤)、④受傷者の破傷風ワクチンの有無)が重要な病歴です。
治療は創部の十分な洗浄をおこない、①傷の評価、②十分な処置(切開、異物除去など)、③一時縫合するか否かの判断、④予防的抗菌薬投与の適応と選択、⑤破傷風および狂犬病予防の適応の判断をおこないます。
口の中には一般的な細菌のほかに、嫌気性菌(酸素がなくても発育する細菌)も多く、有効な抗菌薬を投与します。破傷風ワクチンを10年以上接種していない人や接種不明の人には、破傷風のトキソイドや免疫グロブリンという注射をすることもあります。
また、かき傷などから感染することもありますので、ペットの爪切りや爪カバー装着をおこなうことも一つの方法です。接触後に手洗い・うがいをおこなうことも大切です。
咬傷では、一般に抗生物質が使用されます。動物が持っている黄色ブドウ球菌や溶連菌、パスツレラ菌に対して使用します。
□パスツレラ菌
パスツレラ症はネコやイヌに引っかかれた傷や咬まれた傷から、その動物の口内のパスツレラ菌により感染症を起こすものです。咬まれたり引っかかれたりしてから約30分~数時間後に、激痛を伴う腫脹と浸出液が排出され、頸部のリンパ節の痛み・腫れ、発熱などの症状が起こります。
抗生物質を使用しなくても6~12週間で治ることがありますが、糖尿病や呼吸器疾患を持った人は、肺炎を起こすなど重症化することもあるので注意が必要です。
□狂犬病について
狂犬病にかかった動物(アジアでは、おもにイヌ)に咬まれた部位から、唾液内のウイルスが侵入して感染します。通常、ヒトからヒトに感染することはなく、感染した患者から感染が拡大することはありません。日本では狂犬病予防法により、イヌに年1回の予防接種が義務づけられています。
近年、国内発生がなく、特別な事情がないかぎり狂犬病のワクチンは使用しません。海外ではむやみに動物に触らないこと(特にアジア地域)や、狂犬病の流行国でイヌに接する機会がある場合、渡航前にワクチンを接種しておくことも必要です。
□破傷風について
動物咬傷の場合、破傷風の予防を考える必要があります。破傷風の予防のためには破傷風トキソイド、抗破傷風免疫ヒトグロブリンを投与し、毒素による発病を防ぐことができます。
破傷風トキソイドは、過去10年以上接種歴がない場合に接種を要するとされています。1968年以前生まれなどまったく接種がない人は、受傷直後・1カ月後・6カ月後の3回接種をおこないます。その後は10年おきに1回接種します。1968年より後に生まれた人は定期接種が始まっており、1回接種したあとは10年おきに接種します。
特に60歳以上の人に破傷風が発生しています。傷の汚染の度合いによって、5年以内でも、トキソイドや抗破傷風ヒト免疫グロブリン(テタノブリン-IH)を注射することもあります。
■ヘビ咬傷
ヘビに咬まれた場合、毒素が体に回らないように、落ち着くことです。興奮せずに、走らないでゆっくりと歩くようにし落ち着いて行動することが大切です。
■ヒト咬傷
ヒトに咬まれた場合、そのままにしておくと1週間ぐらいで、腫れ、熱があり、臭い液がでて膿むことがあります。原因は歯周病菌が多いです。
また、ウイルス肝炎やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することもありますので、咬まれたら受診しましょう。
(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)