ことばの発達 家庭の医学

 ことばの遅れは、発達相談でももっとも多いうったえです。
 ただし、ことばの発達はもっとも個人差が大きく、同胞(きょうだい)の少ない家庭では遅れかどうか判断が困難です。ことばの発達は難聴でも遅れますので、心配なときには小児科医に相談してください。1歳までに有意語がいくつか出て、2歳までに二語文(ママ行った、など)が出ていればたいてい正常範囲です。
 2歳になっても有意語が出ないとき、意味不明の言語らしいものを話しているとき、独語が多いが聞き取りにくいとき、3歳になって、ことばはたくさん出ても会話になかなかならず一方的に話すときには、やはり小児科医を受診してください。そこから小児神経専門医などの発達診療の専門医に紹介されることもあります。
 保育園や幼稚園でことばの問題を指摘されたときには、必ず受診しましょう。

■音韻の異常
 くつした→つくした、オカアサン→オタアタン、などの音韻の問題は、幼児期には正常範囲です。意味が聞き取れない程度の音韻の違いがある場合は受診が必要です。また、聞き取りにくい、何を言っているのかわかりづらいのは、ことばの韻律(音の高さ、イントネーション、リズム、間など)の異常であることがあり、ことば以外にも問題があることがあるので、受診するとよいでしょう。

■吃音(きつおん:どもること)
 最初の音がくり返し出たり音が長くなったりして、話し出すのに困難がある状態のことです。幼児期に突然出たりします。ほうっていても治る場合と、ずっと持続する場合があります。何カ月も持続していたり、悪化していき、話しにくいようすや話したがらないようすがあれば、家庭での注意はマイナス面もありますので、受診してください。

■緘黙(かんもく:黙っていること)
 お話しはできるのに黙っていることを緘黙といいます。多くはご家庭ではおしゃべりだが、外では一言も話さない、という場面緘黙(選択性緘黙症)です。極端な不安や発達のかたよりが背景にあることがありますので、家庭外で一言も話さない状態が半年以上も続くなら専門医を受診してください。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 桃井 眞里子)
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