乳幼児の神経系の発達 家庭の医学

■発達の原則
 乳幼児の発達には原則があります。からだの体幹部から末端部に向かって発達し、頭に近いほうから足のほうに向かって発達します。

■発達の特徴
 発達は一直線ではなくて、急に発達する時期と、ゆるやかな時期があります。急に発達する時期は、乳児期にはあまり個人差がありませんが、幼児期には大きな個人差があります。発達を見守るには、個人差に気をとられないように、正常範囲なら長い目で見守ることが、育児のストレス軽減には必要です。
 発達のめやすとして、小児科の外来では発達のスクリーニング票を用いています。これも、あくまでもめやすであり、バランスを大きく欠く場合には相談してください。できない項目があるからといって、遅れではないかと心配するのではなく、あくまでも、めやすとして参考にしてください。
 子どもの発達には、子どもの個性をみきわめながらしんぼう強く対応することがいちばん大切です。育児はゆっくりとした時間を取り戻す作業でもあり、親も日常生活のあわただしさを省みるとてもよい機会です。
 子どもの時間の流れにあわせて、目を見つめて笑いかけたり、ことばがけをしたり、いっしょにいる時間を楽しむことは、子どもの心身の発達にいちばん大切なことです。携帯電話を片手に授乳するなどは、子どもの発達やすこやかな親子関係の発達にマイナスです。

■視覚の発達
 新生児期は、明るさとぼんやり程度がわかります。視力は1カ月になると、0.02程度、6カ月で0.04~0.08、1歳で0.2程度、3歳で0.6~1.0程度になり、5歳になるとやっと1.0以上の成人レベルになります。幼児期早期には、遠くのものには注意をはらえないのは、視力の点からもいえることです。

■聴覚の発達
 胎内で母親の心音を聞いているといわれます。新生児期にはかなり大きな音でないと反応せず、だんだん小さな音、声が聞こえるようになり、4~5歳で成人レベルに達します。

■味覚の発達
 新生児も甘い味覚がわかるといわれます。味覚の好みの形成は習慣によりますので、乳幼児期は食材の味を主として味つけをするにしても薄めを心掛けるのが生活習慣病の予防にも大切です。

■睡眠の発達
 新生児期には1日20時間くらいは寝ています。だんだん睡眠と覚醒のくり返しの数が減りますが、4歳ころまではまだ午後に睡眠時間が必要なため、昼寝をします。4歳をすぎると昼寝は必要なくなります。
 夜更かしの家庭が多くなってきました。子どもにとって早寝早起きは、からだのリズムづくりにとても大切です。乳幼児は午後8時までに、学童はおそくても午後9時までに就寝させるためにテレビの音を小さくする、静かにするなどの家中の協力が必要です。睡眠の足りない子どもは必ずどこかに変調をきたしますし、脳の発達にも大きく影響します。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 桃井 眞里子)
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