運動と精神の発達 家庭の医学

■1カ月ころ
 まだよく目は見えませんが、明るい陽(ひ)ざしに向けるとまぶしそうに目を閉じます。泣いていても、声をかけたり、からだをゆすったりすると気持ちよさそうに反応します。固視(じっと見つめること)がなくとも、心配はいりません。

■2カ月ころ
 声が出てきます。きげんのよいときには声をしきりに出します。声でこたえてあげてください。顔を見つめたりしますし、横方向の追視も出てきます。2カ月で固視が出ない場合には相談してください。この月齢では、遠くだと見えませんから顔の20cmくらいまで近づけてゆっくりと動かしてみてください。あやし笑いが出始め、知的反応が出ます。あやしても反応がなかったり、声や音に無反応だったりした場合は、相談してください。
 赤ちゃんの声にこたえる、笑いかけることは発達にとても大切です。

■3カ月ころ
 だっこしやすくなります。これは、くびがすわりだすからです。くびのすわりも個人差があり、4カ月前後がふつうです。おもちゃや顔をいっそうよく目で追うようになります。そろそろ、手におもちゃを持たせると、しばらく握っていたりします。

■4カ月ころ
 くびがすわり始めるときで、運動発達の指標として、わかりやすい時期です。3~4カ月ですわれば正常です。5カ月になっても、くびがグラグラしてだきにくいときには、小児科医に相談してください。
 顔の前で両手をあわせてよく見たりしています。手におもちゃを持たせると、しばらくはそれで遊んでいられます。おもちゃを見せると、欲しそうに興奮したりします。おもちゃを持たせてもすぐに離してしまい、関心がなさそうな場合には相談してください。いつも手を握ったままのときにも相談してください。

■5カ月ころ
 両手を使って物を持てます。だっこしていると、顔に手が伸びてきて、眼鏡をしていればそれを取ろうとしたりします。寝返りの準備ができてきます。

■6カ月ころ
 欲しい物には手を伸ばしてきます。これは、運動の発達と同時に、知的にも発達してきたからです。寝返りもできるようになります。ほんのすこしお座りができるようになる子どももいますが、できなくても心配はいらない時期です。このころは、よく自分の足をなめたりして遊んでいます。いちばんからだの緊張がとれる時期です。
 名前を呼ばれると振り向いたり、見つめたりします。聴覚の発達をみるのにも大切な時期です。

■7カ月ころ
 しばらくは座って遊んでいられるようになります。左右どちらでも寝返りが頻繁にできます。人見知りも出てきますが、個人差が大きい指標です。

■8カ月ころ
 これ以降はいままでよりも、発達の個人差が大きくなります。ハイハイをしだす子どももいますが、しない子もいます。背中をまっすぐにして座っていられます。8カ月でお座りができない場合には、相談してください。
 関心はさらにひろがり、動きも活発になり、親をさがしたり、だっこをしてほしがったりします。4カ月についで発達をみやすい時期です。

■9カ月ころ
 つかまらせると立とうとします。人見知りは多くの子がします。立とうとするようすがあれば正常です。

■10カ月ころ
 つかまり立ちをします。「だめ」などのことばの調子がわかってきます。大人の声、動作のまねをとてもしたがる時期で、たくさん遊ぶようにしましょう。
 何度もくり返し、まね遊びをすることで、親子関係も脳の発達もうながされます。

■11カ月ころ
 まねが急増し、最初のことばも出るかもしれません。バイバイの動作も始まります。伝い歩きもし始めます。

■12カ月ころ
 ひとり立ちをします。両手を持つとすこし歩けるかもしれません。声がいっそうさかんに出て、ことばも喃語(なんご:意味不明のことば)が急増します。まず、アーアウーウ、だだだだ、パパ、ママ、バーバなどのくり返し語から出始めますが、この時点ではっきりしたことばがなくても、異常ではありません。
 この時点で名前に反応しない、喃語がふえないなどがあれば、聴覚や発達が気になるため、相談してください。

■1歳3カ月ころ
 多くの子どもが記念すべき第一歩を歩きだします。でも、歩かなくても異常ではありません。

■1歳6カ月ころ
 発達をみやすい時期です。大部分が歩きだしています。1歳8カ月すぎても歩かないときには、相談するようにします。正常範囲のときもあり、必ずしも異常ではないことも、念頭に置いてください。
 絵本を指す、単語を言う、積み木を積む、なぐり書きをするなどの知的発達がいちじるしい時期です。ひざの上で絵本を読んであげると、しばらくはおとなしく絵本をさわりながら楽しめる時期です。

■2歳ころ
 走る、おむつが取れだす、スプーンで食べる、二語文を話し始めるなど、活動がひろがります。ただし、おむつが取れなくても、有意語が出なくても異常ではありません。これらの指標は個人差がとても大きいのです。

■3歳ころ
 一瞬だけ片足立ちができます。10cm程度なら飛び降りたり、ジャンプできたり、階段を交互に足を出してのぼったり、1人で食事ができたりします。友達に関心が出てくる時期なので、友達遊びの機会があると喜びます。

■4歳ころ
 片足でとぶのが上手になります。ボール投げ、排便など、いろいろな活動、習慣ができるようになるころです。

■5歳ころ
 ブランコに乗れる、はさみを使う、着衣ができるなど、ますます活発になります。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 桃井 眞里子)
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