エネルギー産生栄養素バランス

 栄養素のうち、たんぱく質、脂質、炭水化物(おもに糖質)の3つの栄養素だけがエネルギーになります。エネルギー量は1gあたりそれぞれ4kcal、9kcal、4kcalで、脂質はほかの2つの栄養素とくらべて高くなります。
 エネルギー産生栄養素バランスは、総エネルギーがたんぱく質(protein)、脂質(lipid)、炭水化物(carbohydrate)から、どのくらいの比率でエネルギーをとっているかを示すもので、それぞれの頭文字をとってPFCバランスといわれます。2つめの脂質が「l」ではなく「f」になっているのは、食品からとる脂質の多くは脂肪であり、食品中の脂質は「fat」といわれる場合が多いため「f」になっています。
 生活習慣病予防においてはこの比率が大切となります。基準となる値は、表のとおりです。


■たんぱく質
 たんぱく質の食事摂取基準は、推定平均必要量を求め、ほとんどの人に不足の状態が起こらないようにするために「推奨量算定係数」の1.25を掛けた数値で示しています。

●たんぱく質の食事摂取基準
(推定平均必要量、推奨量、目安量:g/日、
目標量(中央値):% エネルギー)
性別男性女性男性/女性
年齢等 推定平均
必要量
推奨量
(目安量)
推定平均
必要量
推奨量
(目安量)
目標量1(中央値2
0~5カ月*
6~8カ月*
9~11カ月*
1~2歳
3~5歳
6~7歳
8~9歳
10~11歳
12~14歳
15~17歳
18~29歳
30~49歳
50~69歳
70歳以上
妊婦(付加量)
初期
中期
後期
授乳婦(付加量)



15
20
25
35
40
50
50
50
50
50
50





(10)
(15)
(20)
20
25
35
40
50
60
65
60
60
60
60








15
20
25
30
40
45
45
40
40
40
40

+0
+5
+20
+15
(10)
(15)
(20)
20
25
30
40
50
55
55
50
50
50
50

+0
+10
+25
+20



13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)
13~20(16.5)





* 乳児の目安量は、母乳栄養児の値ある。
1 範囲については、おおむねの値を示したものである
2 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、もっとも望まし値を示すものではない。
(厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版))


 さらにたんぱく質の食事摂取基準には、過剰摂取を予防するために目標量として、エネルギーの13~20%という数値が示されています。
 たんぱく質の過剰摂取は動物性脂肪摂取の過剰を招きやすいことや腎臓への負荷が大きいなどの理由から、摂取基準が2005年版にはじめて定められました。数値はエネルギー比率(%エネルギー)で示されて、総エネルギーの13~20%となっています。実際の目標量(たんぱく質の量:g)は次の式で求めることができます。
 総エネルギー(摂取エネルギー)×(0.13~0.20)÷4kcal
 0.13~0.20を掛けてエネルギーを求めます。
 4kcalで割るのは、たんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギーですので、たんぱく質量(g)に換算するためです。
 たんぱく質のとりかたを考えるときに、どんな食品からとるのかも重要となります。たんぱく質は、アミノ酸という物質が鎖のように連なってできています。筋肉、血液、ホルモンなどはこのアミノ酸の種類と連なりかたが違ってそれぞれの性質が決まっています。人間のからだのアミノ酸は20種類のアミノ酸から成り立っています。
 アミノ酸は、体内の必要量に応じてからだのなかで他のアミノ酸につくり変えることができますが、体内でつくることができないアミノ酸を、必須アミノ酸(トレオニン〈スレオニン〉、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニールアラニン、トリプトファン、リシン〈リジン〉、ヒスチジンの9種類)といい、これは食品からとる必要があります。通称的ないいかたとして「いいたんぱく質」いう言葉がありますが、これは必須アミノ酸を多く含む食品のたんぱく質をいいます。しかし、栄養学的には「たんぱく価」が高い食品が「人にとってよいたんぱく質を含んだ食品」で、単に必須アミノ酸が多いだけではなく、からだが必要としているアミノ酸の構成割合に近い食品をいいます。鶏卵、牛乳、魚肉類などの動物性食品、豆類のなかでも大豆に必須アミノ酸が多く含まれています。ただし、たんぱく価は、1食に食べる食事の食品の組み合わせかたでもよくすることができます。穀類は、リシンというアミノ酸が少ないですが、リシンの多い動物性食品を一緒に組み合わせることで、アミノ酸を効率的に利用することができます。

■脂質
 脂質の食事摂取基準は量と質(脂肪酸)の両方が示されています。量はエネルギー比率で示され、総エネルギーに対して、脂質からのエネルギーの割合がどのくらいになるかを示したものです。1歳以上であれば年齢・性別による違いはなく、20~30%となっています。これが脂質の量でどのくらいになるかは次の式で求めます。
 総エネルギー(摂取エネルギー)×(0.2~0.3)÷9kcal
 計算式の意味はたんぱく質の場合と同じですが、脂肪は1gあたり9kcalですので、割る数が9になります。
 脂質の場合は、どんな脂質をとるか、すなわち脂質の質が生活習慣病の予防には重要となります。2015年版の食事摂取基準では、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸の摂取基準を表のように示しています。

       
●脂質の食事摂取基準
(脂質の総エネルギーに占める割合(脂肪エネルギー比率):% エネルギー)
性別男性女性
年齢等目安量目標量
(中央値 2
目安量 目標量
(中央値 2
0~5カ月
6~11カ月
1~2歳
3~5歳
6~7歳
8~9歳
10~11歳
12~14歳
15~17歳
18~29歳
30~49歳
50~69歳
70歳以上歳
妊婦
授乳婦
50
40















20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)


50
40















20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)
20~30(25)


1 範囲については、おおむねの値を示したものである。
2 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、もっとも望ましい値を示すものではない。
            (厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版))


●飽和脂肪酸の食事摂取基準
(% エネルギー)
性別男性女性
年齢等目標量目標量
0~5カ月
6~11カ月
1~2歳
3~5歳
6~7歳
8~9歳
10~11歳
12~14歳
15~17歳
18~29歳
30~49歳
50~69歳
70歳以上
妊 婦 
授乳婦 









7以下
7以下
7以下
7以下











7以下
7以下
7以下
7以下


(厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版))


●n-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸の
食事摂取基準(g/日)
n-6系脂肪酸n-3系脂肪酸
性別男性女性男性女性
年齢等目安量目安量目安量目安量
0~5カ月
6~11カ月
1~2歳
3~5歳
6~7歳
8~9歳
10~11歳
12~14歳
15~17歳
18~29歳
30~49歳
50~69歳
70歳以上
妊 婦
授乳婦
4
4
5
7
7
9
9
12
13
11
10
10
8


4
4
5
6
7
7
8
10
10
8
8
8
7
9
9
0.9
0.8
0.7
1.3
1.4
1.7
1.7
2.1
2.3
2.0
2.1
2.4
2.2


0.9
0.8
0.8
1.1
1.3
1.4
1.5
1.8
1.7
1.6
1.6
2.0
1.9
1.8
1.8


 ここで、簡単に脂質のことを説明します。詳細は「脂質異常症」の項(高脂血症の食事療法)をご覧ください。脂質は、グリセロールと脂肪酸が結合してできています。私たちが日常摂取する食品の多くはグリセロールに3つの脂肪酸がついた中性脂肪(トリグリセリド:トリは3つという意味です)。脂質の栄養的な役割はこの脂肪酸の種類によって異なります。脂肪酸もたんぱく質と同様に体内でつくることができない必須脂肪酸があり、食事から摂取しなければなりません。必須脂肪酸にはn-6系脂肪酸のリノール酸、リノール酸からつくられるアラキドン酸n-3系脂肪酸のα-リノレン酸があります。ダイエットで厳しい脂質の制限をおこなう場合でも、必須脂肪酸はとる必要があります。
 摂取基準に示されている飽和脂肪酸は獣鳥肉類に多く含まれ、血清コレステロールをあげるはらたきがあるとされ、とり過ぎを防ぐために基準値が示されています。必須脂肪酸でもあるn-6系多価不飽和脂肪酸は、大豆や米の脂質、サフラワー油、大豆油、米油に、n-3系多価不飽和脂肪酸は、魚類の脂質、しそ油に多く含まれています。

■炭水化物
 2005年版の食事摂取基準では、炭水化物についても食事摂取基準が示されました。この数値もエネルギー比率で示され、1歳以上では性に関係なく50~65%となっています。炭水化物には、砂糖(ショ糖)、果物に多い果糖のように単糖類・二糖類といわれる糖質と、穀類やいも類に多いでんぷん(多糖類)がありますが、生活習慣病予防の観点からはでんぷんでの摂取がすすめられます。

■食物繊維
 食物繊維は推奨値が示されていません。食物繊維は、現在、日本人に不足している栄養素と考えられており目標量が示されています。摂取量を目標量に近づける栄養素として位置づけています。

    
●食物繊維の食事摂取基準(g/日)
性別男性女性
年齢等目安量目安量
0~5カ月
6~11カ月
1~2歳
3~5歳
6~7歳
8~9歳
10~11歳
12~14歳
15~17歳
18~29歳
30~49歳
50~69歳
70 以上歳
妊 婦
授乳婦




11以上
12以上
13以上
17以上
19以上
20以上
20以上
20以上
19以上






10以上
12以上
13以上
16以上
17以上
18以上
18以上
18以上
17以上


(厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版))


■ビタミン、ミネラル
 これらの栄養素は、栄養素がからだのなかで代謝するとき、細胞・血液・ホルモンなどをつくるときに必要とする栄養素です。ビタミンやミネラルは個人の体格による違いが示されていませんので、個人の体格を考慮する必要はありませんが、ビタミンの種類によっては、次に述べますようにエネルギー摂取量、たんぱく質摂取量などで考慮を必要とする栄養素もあります。
 ここで摂取に考慮を必要とする、おもなビタミン・ミネラルついて説明します。

□ビタミン
 ビタミンには大きく分けて脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンがあります。脂溶性ビタミンには、ビタミンA、D、E、Kがあります。水溶性ビタミンにはB1、B2、ナイアシン、B6、B12、C、葉酸、ビオチン、パントテン酸があります。
 脂溶性ビタミンは、読んで字のごとく脂に溶けたかたちで運搬され、過剰に摂取すると肝臓に貯蔵されます。このため、過剰な摂取に気をつけたいビタミンです。特に、妊娠中のビタミンAの過剰な摂取は、胎児に影響が出やすいため、妊娠中の過剰摂取に気をつけましょう。しかし、ビタミンAは胎児に発育には不可欠なビタミンです。ふつうの食事であれば過剰に摂取することはありませんが、サプリメントや健康食品の摂取によって過剰となる可能性があります。また、ビタミンEは、体内で不飽和脂肪酸(n-3系、n-6系脂肪酸)の酸化を防ぐはたらきがあるので、不飽和脂肪酸をとるときにあわせてとるとよいとされています。
 水溶性ビタミンのビタミンB1、B2はエネルギー代謝に関係しているため、激しい運動などで、エネルギーをたくさんとるときには一緒にふやす必要があります。「朝は菓子パンにソフトドリンク、昼はおにぎり、夜はカップラーメン、お腹が空いたらスナック菓子」という食べかたを長く続けると、ビタミンB1不足となってしまいます。ビタミンB6はアミノ酸代謝に関与しているビタミンです。たんぱく質をたくさんとる必要が生じたときは、同時にB6もとるようにします。
 葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害の発生の軽減がはかれるビタミンとして妊娠前後3カ月の期間、付加的にサプリメントや強化食品などを利用して400μg/日の摂取がすすめられています。葉酸は緑黄色野菜に多く含まれています。このほかにも、葉酸には脳卒中や心筋梗塞の予防効果があるとして注目されています。葉酸には過剰症の問題もありますので、サプリメントや強化食品でとる場合には過剰にならないように注意します。

□ミネラル
 ミネラルのなかで体内に存在しているミネラルを多量ミネラルといい、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンがあります。存在が100mg以下のものを微量ミネラルといい、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンなどがあります。ミネラルもビタミンと同様に過剰症のリスクがあり、からだに不可欠なミネラルであっても過剰にとればからだに害を及ぼします。
 多量ミネラルのナトリウムは、その多くを食塩(NaCl)からとっています。食塩の過剰摂取が高血圧と関係があることはよく知られていますが、これは食塩の構成成分のナトリウムがこの原因となっている栄養素です。しかし、熱中症の予防などの水分補給に「Na」の補給が重要といわれているように、少なければ少ないほどいいというものではありません。
 平成25年度の「国民健康・栄養調査」の結果によるとカルシウムは不足がみられるミネラルです。カルシウムは骨や歯に99%が含まれていて、骨や歯の主要な成分ですが、このほかに血液のpHの維持や血液凝固にもかかわっています。摂取したカルシウムが吸収されるためにはビタミンD(魚に多く含まれています)の存在も重要です。骨や歯が形成される成長期には特に重要なミネラルです。牛乳・乳製品などからカルシウムをとって、骨を使う、すなわち運動が大切です。
 微量ミネラルの鉄は、カルシウムと同様に平成25年度の「国民健康・栄養調査」の結果によると、食事摂取基準を満たしていないミネラルです。特に生理のある若い女性に鉄の不足傾向がみられます。食事摂取基準を満たしていないイコール「貧血などの健康障害がある」とはいえませんが、ヘム鉄を多く含む動物性たんぱく質(赤身の魚肉類)食品からとると吸収率がよく、すすめられます。また、激しいスポーツをおこなう選手は鉄の必要量が増すだけでなく、赤血球が壊れるため貧血になりやすくなります。若い世代で激しいスポーツをおこなう、特に女性では鉄欠乏性の貧血には注意が必要です。いっぽう、鉄には過剰症があります。サプリメントや強化食品からとろうとする場合には過剰症に気をつけます。
 このほかには、亜鉛は味覚障害に関係が深いミネラルです。亜鉛はカキやイカ、レバー、大豆製品に多く含まれています。味覚障害があると食事がおいしくなくなり、栄養状態の低下を招きます。予防が重要です。
 個々で主要なビタミンやミネラルだけを述べています。言い古されている言葉ですが
ビタミンやミネラルからみても。「からだを動かして、さまざまな食品群からむらなくしっかり食べる」大切さがおわかりいただけましたでしょうか。