知的障害〔ちてきしょうがい〕

 以前は精神遅滞と呼ばれていました。全体的な知的機能の発達が遅れたり停止したりしている状態で、社会生活で援助が必要です。発達の途中であきらかになってきます。
 原因はいろいろですが、大部分の知的障害は特別な原因はなく、たまたま知能レベルが低く生まれついたことによるものです。その多くが軽度の知的障害の領域に入ります。また妊娠中や出生時の障害が原因でなるもの、遺伝子レベルの異常でなるものもあり、これらは比較的重度の領域に入るものが多いのです。
 知的能力の検査には、ウェクスラー児童用知能検査(Wechsler Intelligence Scale for Children:WISC)、田中・ビネー式知能検査などを用います。また、先天性の異常やホルモン異常などを早期に発見するには、生後間もない時期のスクリーニングが必要です。
 知的障害の重症度は、知能検査で測定されるIQによって分類されます。IQ85以上が正常、IQ70~85が境界、IQ50~70が軽度、IQ25~50が中等度、IQ25以下が重度です。
 治療やケアでは、就学、就労、家庭生活場面などへの援助や生活指導が中心になります。また社会復帰施設などの資源の利用も重要です。この病態そのものは精神科的な治療の対象ではありません。しかし精神症状がでやすいこともあり、治療の対象になることが多いのです。症状としては、情緒不安定、攻撃性、興奮、うつ状態、幻覚、妄想などがでやすく、またてんかん症状がみられることも多いので、薬物療法が適応されることもあります。

【参照】子どもの病気:知的発達症(知的障害)

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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