からだの表面に傷があってもなくても、外からの力でからだが傷ついたことを外傷(けが)といいます。からだの表面の皮膚のみではなく、口の中の粘膜、内臓や脳などが傷ついたものも含みます。一般的には刃物で傷ついたり、転んで胸を打ったりして傷ついたものですが、そのほかに特殊な原因(化学薬品、放射線など)によるものもあります。
外傷は社会情勢や周辺環境によって変わります。戦争があれば大量の人々が傷を負い、また、原子力発電所からの多量の放射線漏れによっても起こります。家庭の周辺環境は木材・土からコンクリート・金属に変わり、外傷を受けやすくなっています。大型機械を扱う労働災害事故や高速化による交通事故の外傷は重症で、一度に多くのところにけがをする多発性のものがふえています。災害の竜巻や土石流、地震、津波では強い外力が働くため、外傷の程度が重症になります。ナイフ、鉄砲による傷害事件で引き起こされる外傷は、首、胸、腹に多く、命にかかわります。スポーツ中の外傷は、突き指など軽いものからボクシングによる脳損傷、ラグビーの頸髄損傷などの重症までさまざまです。うつ状態が原因で自殺目的でビルからの飛び降りや電車への飛び込みもふえています。
いっぽう、事故防止策や不幸にして事故を起こしても軽いけがですむような安全対策も考えられています。原子力発電所の安全基準の強化、24時間体制の放射線測定場所の増加がなされています。また、放射性物質の甲状腺への取り込みを防ぐために、原子力施設周辺の自治体などにはヨード剤が準備されています。
幼稚園や公園などの遊具の安全点検も義務づけられています。車事故防止のために自動ブレーキの開発、けが予防のための衝撃吸収の車体の開発、シートベルト、エアバッグ、チャイルドシートなども交通外傷を分析して考えられたものです。産業界でも安全靴、ヘルメットの着用、手を離すと自動的に機械がとまるものなど安全対策をおこなっています。
(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)