扁平上皮がん(SCC)は、白人、ヒスパニック系、アジア系では2番目に、アフリカ系では最も多い皮膚がんである。日光などによる紫外線曝露の他、免疫抑制や色白であることが危険因子とされる。しかし、肌の色が黒い人種では日光に当たらない部位に発症するなど、人種の違いで見られる肌の色素の濃淡によって臨床像が異なる可能性が指摘されている。そのため、あらゆる人種を対象とした研究が非常に重要だ。しかし、SCCを対象としたランダム化比較試験(RCT)における肌の色に関する情報の報告頻度についてはこれまで検討されていない。米・Northeast Ohio Medical UniversityのNatasha L. Salmen氏らは、最も影響力のある国際的な英文皮膚科雑誌上位10誌に掲載されたSCCのRCTにおける肌の色、人種または民族に関する報告率についてのシステマチックレビューをArch Dermatol Res2024;316:115)に報告。SCCの診断・治療・予防の知見における情報格差を浮き彫りにした。

国際的に有力な皮膚科学10誌のRCTをレビュー

 Salmen氏らは、検索対象をインパクトファクターで決定された世界上位10誌の皮膚科学雑誌に掲載されたRCTに設定。Observatory of International Researchによるランクリストから英文誌〔J Am Acad DermatolJAMA DermatolBr J DermatolJ Eur Acad Dermatol VenerolJ Invest DermatolContact DermatitisAm J Clin DermatolJ Dermatol SciDematologyDermatitis(第9位がドイツ語雑誌のため除外、第11位を繰り上げ)〕を選択した。RCTの抽出にはPubMedを用い、2023年7月10日までに収載されたRCTについて、「雑誌名(略語)」「扁平上皮がん」「RCT」で検索した。組み入れ基準はSCCの治療、診断、予防に関するヒトを対象とした英文のRCT論文とした。

 主要評価項目は、データおよび結果に反映される研究参加者の人種、民族、フィッツパトリック尺度による評価、日焼け傾向、メラニン含有量、または色素沈着など、皮膚の色を示すあらゆる用語での報告の有無とした。さらに、主要評価項目に関して、研究場所(米国 vs. 米国外)、資金源の有無や資金提供を受けた業界、発表年(2010年以前 VS. 2010年以降)で層別化しサブグループ解析を行った。

皮膚の色を報告したRCTは60%、ほとんどが白人

 ヒットしたRCT全59件のうち最終的な組み入れ基準を満たしたのは39件だった。

 皮膚の色についての報告があったRCTは23件(59%)、皮膚の色や人種の報告がないRCTは16件(41%)だった。皮膚の色を報告した23件のうち、17件(73.9%)はフィッツパトリック尺度または4段階の肌タイプ尺度による評価を用いていたが、多くがフィッツパトリック尺度Ⅰ〜Ⅲ(白人を対象とした範囲)で、人種は白人/北欧人が最も多く(13件、56.5%)次いで黒人(2件、8.7%)だった。

 サブグループ解析の結果、皮膚の色や人種についての報告があったRCTの割合に、研究場所、資金提供の有無や発表年による有意な差は認められなかった。

非白人にはRCTによる知見の多くが適用できない可能性

 この結果から、Salmen氏らは「SCCのRCTは主に白人を対象としたものだった。その知見の多くが白人とは異なる皮膚の色を有する人種/民族の治療には適用できない可能性がある。非白人におけるSCCの診断・予防・治療に関する情報の格差が続いている」と指摘。

 さらに同氏らは「皮膚の色は皮膚がんの発見、予防、診断、治療に影響する。今回のシステマチックレビューでは、世界の有力な皮膚科学雑誌に掲載されたSCCのRCTを評価したが、研究参加者の人口統計学的報告に皮膚の色を組み込んだRCTは60%未満だった。SCCはあらゆる皮膚の色を有する人々が罹患する皮膚がんで、人種によりさまざまな臨床像や危険因子を有する可能性がある。そのため、研究においてあらゆる人種を含め皮膚の色に関する検討は非常に重要だ。サブグループ解析の結果から、研究の場所、資金源による差が示されなかっただけでなく、過去20年間、皮膚の色についての報告は改善されていないことが判明した。これらの要因を明らかにし、SCCのRCTで皮膚の色に関する報告率が低いことによる社会的影響を評価するためには、さらなる研究が必要である」と述べている。

編集部