体内のがん細胞をピンポイントで攻撃する「粒子線がん治療装置」の小型化に向けた研究を進めている量子科学技術研究開発機構は、ドイツなどとの国際共同研究により、小型レーザーを使って水素イオン(陽子)ビームを光速の約50%まで加速させることに世界で初めて成功した。
 治療に用いるには陽子を光速の55%まで加速させる必要があるが、これまでは40%が限界だった。論文は13日、英科学誌ネイチャー・フィジックス電子版に掲載された。
 粒子線がん治療は、光速近くまで加速させた陽子や炭素イオンビームを体内のがん細胞に直接照射し、死滅させる。X線などを使った治療よりも正常な組織への影響が少ないため、副作用を抑えられるという。
 ただ、大規模な加速器などが必要で、陽子の12倍の質量がある炭素イオンを光速の約70%まで加速させる「重粒子線治療」を行っているのは国内で7施設にとどまっている。
 研究チームは、独ドレスデンにある小型レーザー施設を使い、レーザー光の強度を変化させながら、3段階で加速する新たな手法を開発。光速の約50%の陽子ビームを達成した。
 量研機構関西光量子科学研究所の西内満美子上席研究員は「高出力レーザーを使えば、加速器なしで治療可能な粒子線を発生させられると期待できる。2040年代には実用化したい」と話している。 (C)時事通信社