アルツハイマー病の原因とされるタンパク質の血中濃度を測定し、発症前に脳内での蓄積状況を高精度で推定する手法を東京大などの研究グループが開発した。日本人を対象とした大規模な実証研究は初めてで、病気の早期診断につながる可能性があるという。論文は23日、国際専門誌に掲載された。
 アルツハイマー病は、脳内に「アミロイドβ(ベータ)」や「タウ」という異常なたんぱく質が発症の10~20年前から蓄積することで神経細胞が傷つき、認知機能が低下する。厚生労働省によると、国内で約600万人とされる認知症患者のうち、6~7割はアルツハイマー病患者と推計される。
 研究グループは2019年から、認知機能は低下しているがアルツハイマー病の発症には至っていないか、無症状患者の血液検査などを継続的に実施。うち474人分について、血中のアミロイドβなどの値と、脳内での蓄積状況を調べる陽電子放射断層撮影(PET)の画像を比較したところ、血中濃度から蓄積状況を高精度に推定できた。
 認知症予備軍の軽度認知障害や早期アルツハイマー病患者を対象とした治療薬「レカネマブ」を投与するには、PET検査でアミロイドβなどの脳内の蓄積状況を調べる必要がある。ただ、診断装置の整備状況には地域差があり、患者の費用負担も大きい。
 研究グループの岩坪威・東大大学院教授は「検査を実用化し治療薬を効果的に用いることで、アルツハイマー病の早期予防と治療につなげたい」と話している。 (C)時事通信社