異常なタンパク質が沈着―心アミロイドーシス
~他の病気との合併も(慶応大学病院循環器内科 福田恵一教授)~
心アミロイドーシスは、心臓の組織に異常なタンパク質(アミロイド)が沈着し、心臓の働きが悪くなる病気だ。慶応大学病院(東京都新宿区)循環器内科の福田恵一教授は「心アミロイドーシスは、さまざまな病気が後ろに隠れていたり、前段階として別の病気が表れたりします」と話す。
発症前に別の病気が表れ、気付かないまま治療を続けていることも
▽手根管症候群の先行も
アミロイドの元となるタンパク質は30種類以上あり、関連するのは主にトランスサイレチンと免疫グロブリン軽鎖だ。トランスサイレチンには、遺伝性の変異型と高齢男性に多い野生型がある。免疫グロブリン軽鎖は、骨髄に多い形質細胞の異常でアミロイドが沈着するAL型が大半だ。
アミロイドは心臓の筋肉を厚くして動きを悪くする。「自覚症状は動悸(どうき)や息切れ、脚のむくみなどで、しばしば肥大型心筋症や大動脈弁狭窄(きょうさく)症、HFpEF(ヘフペフ、左室駆出率の保たれた心不全)などとも合併します」と福田教授は説明する。
野生型では、手に痛みやしびれが出る手根管症候群が先に表れることがある。「両手の親指の付け根にある正中神経にアミロイドが沈着するためで、心アミロイドーシスを発症する何年か前に表れます」。気付かずに整形外科を受診し、治療を受けているケースが少なくないという。
▽治療法は服薬や移植
心アミロイドーシスの検査では、胸部レントゲン、血液、心電図、心臓超音波などを行う。「心電図検査では波の高さが低く(低電位)、心臓超音波検査では心肥大や心室壁への顆粒(かりゅう)状の強い白色を示す特徴があります」と福田教授。骨シンチグラフィーという検査では、本来写らない心臓が映し出されるのも特徴だ。確定診断はカテーテルで心筋の一部を採取し、アミロイドの沈着を確認する。
治療には2019年からタファミジスという飲み薬が変異型と野生型に適用となった。肝臓で作られるトランスサイレチンを安定化させ、余分なアミロイドを作らせない働きがある。変異型では、これに加え肝移植も検討する。AL型では化学療法や早期の自家造血幹細胞移植などを行う。
福田教授は「今まで心アミロイドーシスは治療法がないと言われていましたが、現在、薬の開発が盛んに行われています。この病気を知って、早期発見、早期治療につなげてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/12/27 05:00)
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