治療・予防

低下した臓器の機能が改善
全身性ALアミロイドーシスの新薬(京都鞍馬口医療センター 島崎千尋院長)

 異常なタンパク質が全身に蓄積し、さまざまな臓器の働きが低下する全身性ALアミロイドーシス。心臓の機能に障害が引き起こされると命に関わるが、治療法が限られていた。近年、新薬の開発が進み、治療法の拡充が期待されている。京都鞍馬口医療センター(京都市)の島崎千尋院長に聞いた。

 ▽異常タンパクが臓器に蓄積

全身性ALアミロイドーシスの主な症状

全身性ALアミロイドーシスの主な症状 ▽異常タンパクが臓器に蓄積

 人の血液細胞の一つである「形質細胞」は、細菌やウイルスなどと戦う免疫に関わるタンパク質(抗体)を産生している。全身性ALアミロイドーシスでは、形質細胞が免疫機能を果たさない異常なタンパク質をたくさん作り、その一部が、アミロイドと呼ばれる体内で溶けにくい「線維のくず」のようになって臓器にたまっていく。

 その結果、蓄積した臓器と障害の程度に応じてさまざまな症状が表れる。例えば、心臓なら心不全不整脈、腎臓ならタンパク尿や足のむくみ、肝臓なら黄疸(おうだん)、消化管なら下血や食欲不振、神経なら手足のしびれや立ちくらみ―などだ。心不全不整脈が表れると突然死に至る恐れがある。

 患者の年齢中央値は65歳。新たな発症患者は年間500人程度だが、「高齢化で増えている可能性がある」と島崎院長は指摘する。

 治療は、異常なタンパク質を産生する形質細胞を死滅させることが主眼となる。大量の抗がん剤を投与して形質細胞を死滅させた後、あらかじめ採取しておいた自分自身の血液のもとになる細胞を点滴する「自家移植」で10年以上の生存が期待できる。しかし、大量の抗がん剤に耐えられる体力がある人などが対象で、この治療を受けているのは2割弱にとどまる。

 移植を受けられない患者には複数の抗がん剤の併用療法が行われるが、公的医療保険の対象外という課題がある。

 ▽新薬含め4剤を併用

 新たな治療法として、抗がん剤の併用療法にダラツムマブという新薬を組み合わせる治療が厚生労働省で承認に向けて審査されている。この新薬は、異常なタンパク質を産生する形質細胞をピンポイントで攻撃して、死滅させる効果が期待されている。臨床試験では、従来の抗がん剤の3剤併用療法にダラツムマブを加えると、早期に血液中の異常タンパク質が減り、心臓や腎臓の機能も改善した。副作用として、免疫に関わる血液成分であるリンパ球の減少や肺炎などが報告された。

 島崎院長は「新たな治療法の登場が期待されるため、希望を持って治療に臨んでほしい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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