国税庁がまとめた1月1日現在の路線価は、全国平均が3年連続で上昇した。新型コロナウイルス感染拡大からの回復が顕著となり、経済活動も活発化。インバウンド(訪日客)を含む人の移動や産業地の再開発などを踏まえ、三大都市圏だけでなく全国的に地価の上昇基調が見られた。
 標準宅地の評価基準額の全国平均は前年比2.3%の伸び率を記録。計算方式が違うものの、リーマン・ショック後の2009年分以降では最大となった。
 全国各税務署の最高路線価で上昇率トップだったのは、大町税務署(長野県)管内の白馬村で32.1%。スキーシーズンの冬季だけでなく通年で訪日客が増加しており、「コロナ禍前に戻ってきている。観光客数は過去最高に上る見込み」(村役場担当者)。国内富裕層や外国人向け別荘地としての需要拡大も要因との見方がある。
 東京都台東区浅草の雷門通りも16.7%上昇。23年の7.0%から大きくアップし、東京国税局は「国内外の観光客が戻ってきた」との見方を示した。
 21、22年に最高路線価の下落率が全国で最も大きかった大阪市中央区の心斎橋筋。観光名所・道頓堀が近く、コロナ禍収束で訪日客の回復とともに反転し、今回は13.6%上がって1608万円となった。25年の大阪・関西万博会場への乗換駅となるJR・大阪メトロ弁天町駅がある同市港区の中央大通も10.6%伸びた。
 熊本県菊陽町が上昇率24.0%で2年連続全国2位。町内に進出した半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場が年内に稼働し、第2工場も隣接地に着工予定。波及効果で企業の事務所やホテル用地などの需要が高まっている。
 一方、下落率が最も大きかったのは、北海道江差町の5.9%。同余市町の5.6%、秋田県能代市の5.3%、北海道八雲町の4.8%と続いた。 (C)時事通信社