中国・University of Hong KongのKuan Peng氏らは、メトトレキサート(MTX)で効果不十分な関節リウマチ(RA)患者約2万5,000例を対象に、生物学的製剤(bDMARD)インフリキシマブ(IFX)およびアダリムマブ(ADA)のバイオ後続品(バイオシミラー)の費用効果を検討。その結果、従来型合成抗リウマチ薬(csDMARD)レフルノミドと比べ、バイオシミラーIFXおよびADAは費用効果が高かったとJAMA Netw Open(2024; 7: e2418800)に発表した。
低費用、高QALYでICERはマイナスに
Peng氏らは香港の医療データベースから、2000~21年にRAと診断された患者2万5,099例(平均年齢56歳、女性72.7%)を抽出。Markovモデルによるシミュレーションを行い、MTX単剤療法の失敗後にMTXとの併用でレフルノミド、バイオシミラーIFX(CT-P13)、バイオシミラーADA(ABP-501)を使用した場合の費用効果を評価した。
基準分析において、主要評価項目とした生涯医療費および質調整生存年(QALY)はレフルノミドで15万4,632米ドル、14.82QALY、バイオシミラーIFXで15万2,326米ドル、15.35QALY、バイオシミラーADAで14万5,419米ドル、15.55QALYと算出され、バイオシミラーの2剤はレフルノミドと比べて医療費が低く、QALYが高かった。
決定論的感度分析では、レフルノミドに対する1QALY獲得当たりの増分費用効果比(ICER)はバイオシミラーIFXで-9,088~1万238米ドル、バイオシミラーADAで-1万5,797~-8,615米ドルと算出され、いずれも2022年の香港における1QALY獲得当たりの支払い意思額(WTP)の閾値(4万8,555米ドル)を下回り、基準分析と同様にバイオシミラー2剤はレフルノミドと比べて費用効果が高かった。
確率的感度分析では、モンテカルロシミュレーション(1万回計算)で費用効果が高くなる確率はレフルノミドで0%、バイオシミラーIFXで9%、バイオシミラーADAで91%だった。
さらに、シミュレーション期間、ベースラインでの年齢、割引率、治療戦略などを変化させたシナリオ分析でも、バイオシミラー2剤はレフルノミドと比べて費用効果が高かった。
先行品と価格差大、高額の支持療法など香港の事情も
Peng氏らは「今回の結果は、香港以外の国・地域には当てはまらない可能性がある 」と研究の限界を指摘した上で、「MTX不応RA患者の管理において、レフルノミドと比べバイオシミラーIFXおよびADAは費用効果が高かった」と結論している。
ICERが負の値となった理由について、「香港ではバイオシミラーと先行品の価格差が極めて大きく、ADAで先行品7,073米ドルに対しバイオシミラー940米ドル(87%低下)、IFXで先行品3,609米ドルに対しバイオシミラー1,654米ドル(54%低下)となっている。また、支持療法の費用(1コース当たり2,891米ドル)が薬剤費と比べて大幅に高い。バイオシミラー使用により病勢進行が遅延し、支持療法に費やす時間が短縮されることが、全体的な医療費の削減につながっている」と説明している。
(太田敦子)