GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬セマグルチドは、いずれもランダム化臨床試験(RCT)で体重減少効果が示されているが、過体重または肥満成人を対象に直接比較したデータはなかった。米・非営利医療機関Providence Health Systemと患者データ分析サービスのTruveta社は、薬剤処方および受け取りデータを基に、実臨床において両薬剤を比較する大規模研究を実施。その結果、肥満管理におけるチルゼパチドの有用性を示唆する知見が得られたことを、Truveta社のPatricia J. Rodriguez氏らがJAMA Intern Med2024年7月8日オンライン版)に報告した。(関連記事「チルゼパチドの体重減少効果を非糖尿病中国人で確認」)

傾向スコアマッチングさせた1万8,000例超が対象

 対象は、2022年5月~23年9月にチルゼパチドまたはセマグルチド※1を処方され、薬剤を受け取った過体重※2または肥満の成人。主な組み入れ基準は、過去にGLP-1受容体作動薬の使用歴がなく、追跡開始時の体重が記録されている者だった。Truveta社の医療データベースから4万1,222例(セマグルチド3万2,029例、チルゼパチド9,193例)を抽出し、傾向スコアにより1:1で背景をマッチングさせた1万8,386例(平均年齢52.0±12.9歳、女性70.5%)を解析対象とした。

 主要評価項目は、治療中の体重変化(ベースライン時と比べ5、10、15%以上の体重減少の達成率)と3、6、12カ月後の体重変化率とした。消化管関連の有害事象(AE)についても評価した。チルゼパチド群の55.9%、セマグルチド群の52.5%が薬剤の使用を中止した時点で追跡を終了した。

体重減少達成のHRは1.76~3.24、チルゼパチドで一貫して高い

 解析対象(1万8,386例)の背景を見ると、人種は白人が77.1%、黒人が11.8%、アジア人が1.9%、その他・不明が9.1%だった。9,563例(52.0%)が2型糖尿病で、ベースライン時の平均体重±標準偏差は110±25.8kgだった。

 体重減少の達成率は、セマグルチド群と比べチルゼパチド群で有意に高かった〔5%減少:ハザード比(HR)1.76、95%CI 1.68~1.84、10%減少:同2.54、2.37~2.73、15%減少:同3.24、2.91~3.61〕。

 3、6、12カ月後の体重変化率は、セマグルチド群の-3.6%、-5.8%、-8.3%に対し、チルゼパチド群では-5.9%、-10.1%、-15.3%と大きかった(3カ月:群間差−2.4%ポイント、95%CI −2.5~−2.2%ポイント、6カ月:同−4.3%ポイント、−4.7~−4.0%ポイント、12カ月:同−6.9%ポイント、−7.9~−5.8%ポイント)。

 感度分析(修正ITT集団解析および逆確率重み付け解析)とサブグループ解析(2型糖尿病の有無)においてもチルゼパチドの優位性は変わらなかった。

 消化管関連のAE発生率に両群で有意差はなかった。

 以上の結果から、Rodriguez氏らは「過体重または肥満の成人において、セマグルチドと比べチルゼパチドの使用は、臨床的意義のある体重減少の達成率が有意に高かった」と結論。「今後の研究で、主要有害心血管イベントの低減など、他の重要な転帰に関する比較を行う必要がある」と付言している。

※1 組み入れ基準は2型糖尿病患者に限定しないが、比較する薬剤において①2型糖尿病の適応を取得している、②注射製剤である―ことをチルゼパチド(マンジャロ)と統一するため、セマグルチドにはオゼンピックを用いた

※2 過体重:米国における一般的な過体重の基準はBMI 25~29.9だが、肥満関連のRCTで頻用される基準BMI 27以上を用いた

(小路浩史)