厚生労働省は、頻繁に同じ医療機関に通う生活保護受給者の早期把握に向け、地方自治体とモデル事業を行う方針だ。マイナンバーカードを活用した「オンライン資格確認システム」で受診状況を確認し、生活習慣や健康の改善に向けた指導を強化する。
 同省担当者は「受診行動が定着する前に患者にアプローチすることが効果的」と強調。現在、モデル事業を希望する自治体と内容を調整しており、準備が整い次第開始する。
 同じ病気で同じ医療機関を受診する回数が多い「頻回受診」は、重複する検査や投薬による患者への悪影響に加え、医療費適正化の観点からも問題になっている。
 生活保護受給者の場合、医療機関などを受診しても原則自己負担が発生しない。同省によると、月15回以上受診した生活保護者が2022年度は約1万人に達し、医師が「必要以上の受診」と判断したケースは約2000人だった。
 現行では医療機関や薬局が保険者に請求するレセプト(診療報酬明細書)で確認しているため、実際の受診から助言までに2カ月程度を要している。より早期に状況を把握するため、オンライン資格確認システムを活用することにした。
 モデル事業では、福祉事務所が同システムで受給者の利用実績を確認。頻回受診と判断された場合、戸別訪問による助言などにつなげる。事業費は国が全額負担する。
 厚労省は、21年から展開する健康管理支援事業の中で、福祉事務所による「頻回受診指導」を柱の一つに位置付けている。指導を受けた人のうち、適切な回数に改善した人の割合は22年度で約47%だった。 (C)時事通信社