日本医師会は8月21日に定例会見を開き、会長の松本吉郎氏が医師偏在に関する政府への提言を発表した。医師少数地域における勤務希望者のマッチングシステム創設・新規開業支援など具体的な施策を「6つの柱」としてまとめ、これらの施策を5~10年以内に推進するための「国による1,000億円規模の基金創設」を強く訴えた。(関連記事「専門医機構、4つのワーキンググループ新設」)

「もう一段階ギアを上げて主体的かつ積極的に取り組む」

 松本氏は会見で、「医師偏在の是正は国民健康保険制度を堅持し、必要なときに必要な医療を受けられる体制を確保するために必要不可欠。これまで以上に、もう一段階ギアを上げて主体的かつ積極的に取り組んでいく」と述べた。

 政府への提言として掲げたのは、①医師少数区域勤務経験を求める地域医療支援病院の管理者要件を公的・公立病院にも拡大、②医師少数地域における新規開業資金支援および医師の確保・派遣の強化、③医師少数地域での勤務希望者への全国的なマッチングシステムの創設、④保険医療機関管理者として、卒後一定期間の保険診療実績の要件追加による保険診療の質の向上、⑤地域医療貢献の枠組みを制度化し、医療機能強化、実績をフォローアップする仕組みの導入、⑥これらの施策を5~10年で推進するための1,000億円規模の医師偏在対策基金を国において創設-という6つの柱だ。今後、厚生労働省の検討会などで発信していくとしている。

インセンティブがモチベーションアップにつながる

 医師偏在対策については、政府が「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)」の中で「経済的インセンティブによる偏在是正」を明記している。

 松本氏は「医師偏在対策は、補助金などによるインセンティブを設けるのが大前提。モチベーションを高めるという意味も含め、医師少数区域で働いてもらえるよう、実際に勤務する医師はもちろん、医師を派遣する医療機関に対してもインセンティブを付けて対応すべきだ」と、医師偏在対策に特化した基金創設を強く訴えた。

 さらに日本医師会として、医師偏在対策基金を2025年度の政府予算に盛り込みたいとの意向を示した。

(小暮秀和)