重い遺伝病が子に伝わるのを防ぐために受精卵を選別する「着床前診断」について、日本産科婦人科学会(日産婦)は28日、2023年に72件の申請を審査し、うち58件を承認したと発表した。成人後に発症する病気に診断対象を広げた22年以降、審査結果の公表は初めて。
 学会によると、対象外とされていた目のがん「網膜芽細胞腫」などが認められた。16~21年の申請数は年平均約24件だったが、対象の拡大に伴い23年は大幅に増加した。今回承認されなかった14件の内訳は、不承認3件、審査継続中9件、取り下げ2件だった。
 同じ疾患で審査結果が分かれた症例もあり、記者会見した加藤聖子理事長は「家系の状況から判断し、重篤性の定義を満たしていない」などと理由を説明した。
 着床前診断は、体外受精した受精卵を調べ、遺伝子や染色体に異常が見つかった場合は子宮に戻さずに廃棄する。従来は成人前に死亡する恐れがある病気などに限られ、日産婦が症例ごとに審査してきた。
 しかし、こうした基準に当てはまらない「網膜芽細胞腫」の患者から要望を受け、日産婦が22年4月に条件付きで拡大。成人後に発症する病気でも、有効な治療法がないか、身体への負担が大きい治療が必要となる症例にも対象を広げた。 (C)時事通信社