転移を伴わない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)の患者に対する標準治療として、3つの新しいアンドロゲン受容体阻害薬―ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドが承認されている。しかし、それら薬剤の臨床における効果および忍容性を比較したデータはほとんどない。米・Duke UniversityのDaniel J. George氏らは電子カルテデータベースに基づく3剤比較研究を実施。その結果、ダロルタミドは他2剤に比べnmCRPC患者において治療中止と転移性CRPC(mCRPC)への進行リスクが低く、有望な治療選択肢となる可能性が示されたJAMA Netw Open2024; 7: e2429783)に報告した(関連記事「nmCRPCに対する新たな治療選択肢」「3剤併用療法で変わる前立腺がん治療」)。

nmCRPC患者870人を対象とした大規模コホート研究

 研究に用いたのは米国の泌尿器科ネットワークであるPrecision Point Specialty(PPS)の医療記録データベース。2019年8月〜22年3月にダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドのいずれかによる治療を開始したnmCRPC患者870人が対象となった。主要評価項目は治療中止とmCRPCへの進行の複合エンドポイントとした。また、各エンドポイントについて個別の評価も行った。

 870人中362人(41.6%)がダロルタミド、382人(43.9%)がエンザルタミド、126人(14.5%)がアパルタミドを使用していた。平均年齢は78.8±8.7歳で、自己申告に基づく人種の内訳は黒人またはアフリカ系米国人が187人(21.5%)、白人が585人(67.2%)、その他または不明が98人(11.3%)だった。

ダロルタミドの優れた忍容性と治療効果を示唆する結果

 複合エンドポイント到達率はダロルタミド群が37%、エンザルタミド群が52.6%、アパルタミド群が52.4%と、ダロルタミド群で低かった。同様に、個々のエンドポイントもダロルタミド群で低かった(治療中止率:各30.4%、40.8%、46%。mCRPC進行率:17.7%、28.3%、27.8%)。

 Kaplan-Meier曲線で解析した結果、ダロルタミドによる治療はエンザルタミド、アパルタミドに比べて複合エンドポイントに達するまでの期間が長いことが示された。未調整Cox比例ハザード回帰モデルでは、ダロルタミド群で複合エンドポイント到達リスクが有意に低いことが示唆された。ベースラインの共変量を調整後も、ダロルタミド群の複合エンドポイント到達リスク減少率(RR)はエンザルタミド群に対し33.8%〔ハザード比(HR)0.66、95%CI 0.53〜0.84〕、アパルタミド群に対し35.1%(同0.65、0.48〜0.88)と有意に低かった。

特に高齢、副作用高リスクnmCRPC患者の治療に資する可能性

 同様に、治療中止リスクはエンザルタミド群(RR 27.4%、HR 0.73、95%CI 0.56〜0.94)、アパルタミド群(同39.1%、0.61、0.44〜0.85)に比べてダロルタミド群で有意に低かった。mCRPC進行リスクについても、エンザルタミド群(同40.6%、0.59、0.43〜0.82)、アパルタミド群(同35.3%、0.65、0.42〜0.99)に比べダロルタミド群で有意に低かった。

 なお、エンザルタミド群とアパルタミド群の比較では、複合および個々のエンドポイント到達リスクに差はなかった。

 以上から、George氏らは「実臨床においてダロルタミドはエンザルタミド、アパルタミドに比べ治療期間およびmCRPCに進行するまでの期間が長いことが示された。この結果は日常診療での薬剤選択に大きな影響を与える可能性がある。特に高齢者や副作用のリスクが高い患者にとって、ダロルタミドが有望な治療オプションとなるだろう」と結論している。

(編集部)