過剰なコラーゲン沈着による病的な瘢痕であるケロイドは、美容的な問題だけでなく、痛みや痒み、心理的なストレスを引き起こす場合もある。さまざまな治療を行っても再発するケースが多いため、再発の危険因子の特定が重要である。韓国・Soonchunhyang UniversityのDa Woon Lee氏らは、ケロイド再発の予測因子としての可能性が示されている血清ビタミンD濃度に注目し、両者の関連を後ろ向きに検討。血清ビタミンD濃度はケロイド再発の予測因子ではなかったとJ Cosmet Dermatol(2024年11月28日オンライン版)に報告した(関連記事「ケロイドをどう治す?」「ビタミンD欠乏に関連する脱毛症のタイプは?」)。
血清ビタミンD濃度の術前記録がある160例を調査
最近の研究で、健康対照群と比べケロイド患者群では血清ビタミンD濃度が低いことが観察されるなど(Wound Repair Regen 2023; 31: 563-575)、ビタミンD欠乏とケロイドとの関連が示唆されている。しかし、血清ビタミンD濃度がケロイドの再発に及ぼす影響は明らかでない。Lee氏らは今回、「ケロイド切除術を受ける前の血清ビタミンD濃度が低いほどケロイド再発リスクが上昇する」との仮説を立てて検証した。
対象は2012〜22年に韓国の三次医療センターでケロイド切除術を施行した患者のうち、術前の血清25水酸化ビタミンD〔25(OH)D〕および1,25-水酸化ビタミンD〔1,25(OH)2D〕濃度の測定値の記録があり、術後にビタミンDサプリメントの摂取歴がない160例(平均年齢34.39歳、女性68.8%)。ケロイドの再発は術後の定期的な経過観察(最初の1年間は3カ月ごと、以降は6カ月ごと)により評価した。
再発あり群(18例)となし群(142例)における血清25(OH)Dの中央値は、それぞれ15.7ng/mL(四分位範囲10.2〜20.1ng/mL)、16.3ng/mL(同11.8〜23.1ng/mL)、血清1,25(OH)2Dの中央値は39.4pg/mL(同32.5〜68.0pg/mL)、43.9pg/mL(同34.4〜58.9pg/mL)で、いずれも有意差はなかった。
加齢がケロイド再発の有意な保護因子
そこでLee氏らは階層的ロジスティック回帰分析を行い、潜在的交絡因子を調整しながら段階的にケロイド再発とビタミンD濃度の関係を評価した。
まず、年齢と性について検討したところ、年齢の上昇はケロイド再発のリスク低下と有意に関連していた〔オッズ比(OR)0.934、95%CI 0.887〜0.983、P=0.009〕。一方で、性は有意な関連を示さなかった。
次に、ケロイドの解剖学的な部位と切除数を追加して検討したが、いずれも再発との有意な関連はなかった。放射線治療の有無とタイミングを加えた検討においても、有意な関連は認められなかった。
最後に、血清25(OH)Dと血清1,25(OH)2Dの濃度を追加したが、いずれも再発との有意な関連はなかった(順にOR 0.993、95%CI 0.919〜1.074、P=0.866、同1.011、0.982〜1.041、P=0.464)。
以上から、同氏らは「術前の血清ビタミンD濃度はケロイド再発の予測因子ではなかった。一方で、加齢はケロイド再発の有意な保護因子であった」と結論。その上で、「ケロイドの複雑な病因を理解するためには、他の潜在的な危険因子についてさらに調査する必要がある」と付言している。
(編集部・長谷部弥生)