厚生労働省は10日、2025年の年金制度改革で検討している将来世代の基礎年金(国民年金)の水準底上げ案について、世代別の受給総額への影響試算を公表した。現行制度と比べ、現役時代にサラリーマンとして長く働いた1959年度生まれ(65歳)の高齢世代が厚生年金と合わせて計76万円減るのに対し、将来世代の75年度生まれ(49歳)は136万円増える結果となった。
 公的年金は、全ての人が加入する基礎年金と、サラリーマンらが加入する厚生年金の2階建ての構造。少子高齢化により保険料を納める現役世代が減少する中でも制度を保てるよう、「マクロ経済スライド」という仕組みで、いずれも給付水準を少しずつ抑えている。
 減額期間は、厚生年金は26年度に終了するが、財政が脆弱(ぜいじゃく)な基礎年金は57年度まで続く予定。基礎年金しか受け取れない自営業者らが低年金に陥るリスクがあることから、底上げ案では厚生年金の積立金と国費を基礎年金に投じることで、終了時期を36年度でそろえる。改革を行わない場合と比べ、基礎年金の給付水準は3割程度底上げされる見込みだ。
 試算は過去30年と同様の経済状況が続き、高齢世代と将来世代がそれぞれ65歳から平均余命まで22年間、年金を受け取る前提で実施した。
 それによると、24年度に65歳で受給が始まる59年度生まれの年金受給総額は、厚生年金の減額が長くなる影響で、計4145万円から計4068万円に減る。逆に、40年度に受給が始まる75年度生まれは、基礎年金が手厚くなるため、計4281万円に増える。 (C)時事通信社