慢性閉塞性肺疾患(COPD)の将来の増悪リスクは、現在のGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)の基準では過去12カ月間に中等度増悪2回以上、重度増悪1回以上または両方があった場合に高リスクとされる。オランダ・Maastricht University Medical Centre+のKiki Waeijen-Smit氏らは、ドイツ人COPD患者を対象に実施されたCOSYCONET試験の二次解析を行った結果、現在のGOLDによる増悪歴の基準を用いたCOPD増悪リスクの推定精度は不十分で、中等度増悪歴の基準値を年2回から1回に下げることにより精度が向上したJAMA Netw Open2024; 7: e2445488)に発表した(関連記事「COPDガイドライン、4年ぶりに改訂」)。

増悪リスク推定は短期(1年)も長期(4年)も低精度

 解析対象はCOSYCONET試験に参加したCOPD患者2,291例で、男性が60.9%を占め、ベースラインでの平均年齢は65歳、平均推定1秒量(FEV1)は52.5%(標準偏差18.6%)で、4.5年の追跡期間中に219例(9.6%)が死亡した。

 主要評価項目は、中等度および重度COPD増悪リスクと4年全死亡リスクとし、現在のGOLDによる増悪歴の基準(過去12カ月間に中等度増悪2回以上、重度増悪1回以上、または両方)とWaeijen-Smit氏らが提案した新基準(同期間に中等度増悪1回以上、重度増悪1回以上、または両方)によるリスク推定を比較した。

 解析の結果、現GOLD基準を用いた推定の受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUROC)、感度、特異度、適合率-再現率曲線下面積(AUPRC)は、それぞれ中等度増悪の1年リスク推定で0.63、39.8%、85.5%、0.59、重度増悪の1年リスク推定で0.62、47.3%、76.8%、0.46にとどまった。

 中等度および重度COPD増悪の4年リスク推定においても結果は同様だった。

中等度増悪歴2回→1回で精度がやや向上

 一方、新基準を用いた推定のAUROC、感度、特異度、AUPRCは、それぞれ中等度増悪の1年リスク推定で0.66、62.6%、70.1%、0.72、重度増悪の1年リスク推定で0.63、68.4%、58.2%、0.63だった。4年リスク推定においても同様の結果が認められた。

 4年全死亡リスクは、COPD増悪歴がない患者を参照とした場合、12カ月間の中等度増悪が3回以上(オッズ比2.18、95%CI 1.27~3.72)、重度増悪が1回以上(同1.57、同1.29~1.91)の患者で高く、現GOLD基準を用いた4年全死亡リスク推定はAUROCが0.55(95%CI 0.51~0.60)にとどまった。

 以上を踏まえ、Waeijen-Smit氏らは「現GOLD基準によるCOPD増悪および全死亡のリスク推定精度は低く、中等度増悪歴の基準値を年1回に下げることで増悪リスクの推定精度が向上した」と結論。「ただし、依然として精度は不十分で、増悪歴のみでは将来の増悪リスクを正確に推定できない可能性がある。また、基準を下げることによる過剰治療の可能性や、それに伴う医療費への影響を評価する必要がある」と付言している。

医学翻訳者/執筆者・太田敦子