治療・予防

3剤を配合した吸入薬が登場 
喫煙が原因となるCOPD

 2018年に亡くなった落語家の桂歌丸さんが患っていた慢性閉塞性肺疾患(COPD)。呼吸機能が低下し、せき、たん、息切れといった症状が徐々に悪化、死に至ることもある病気だ。気管支を広げて呼吸を楽にする吸入タイプの気管支拡張薬が治療の基本だが、2種類の気管支拡張薬と炎症を抑える薬の計3種類を一度に吸入できる配合薬が19年に相次いで登場し、患者の症状に合わせた治療が行いやすくなった。 

 ▽気管支を広げる薬が基本

 COPDの国内患者数(40歳以上)は約530万人と推定されている。主な発症原因は、たばこの煙に含まれる有害物質だ。東京医科大学八王子医療センター(東京都八王子市)呼吸器内科の寺本信嗣教授は「70歳以上の喫煙者または喫煙経験がある人は、COPDの可能性が極めて高い」と指摘する。

 しかし、治療を受けているのは22万人にとどまる。寺本教授によると、患者の呼吸機能は1年前と比べて差を感じなくても、10年前、20年前と比べれば大きく低下している。だが長い経過の中で慣れてしまい、病気だと気付かないのだという。

 気管支拡張薬の吸入など適切な治療を行えば、呼吸機能の低下を遅らせてCOPDと長く付き合うことができる。もちろん禁煙は不可欠だ。

 ▽正しい吸入法を身に付けて

 「吸入薬は気道に直接届き、副作用や全身への作用が比較的少ない。また、複数の合併症を抱え、多種類の飲み薬を服用する高齢者でも負担になりません」と寺本教授。半面、使い方を誤ると期待する効果が得られないため、「正しい吸入方法を身に付けて、肺の隅々まで薬が届くように吸い込むことが大切です」と説明する。

 COPD患者でゼーゼーと呼吸するなどぜんそくの症状があれば、気管支拡張薬に、ぜんそく治療の基本で炎症を抑えるステロイド吸入薬を併用する必要がある。従来、気管支拡張薬やステロイドのうち2種類を配合したCOPDの吸入薬はあったが、19年には2種類の気管支拡張薬とステロイドの3剤配合吸入薬が相次いで発売された(商品名テリルジー、ビレーズトリ)。複数の吸入器を使う必要がなく、簡便に治療できる。

 寺本教授は「患者さんごとに適した治療薬があります」と前置きし、「COPDとぜんそくの合併例や、小児期にぜんそく経験のある人などが3剤配合薬の対象になると考えられます」と説明する。その上で、「数年前と同じペースで歩けないとか、階段を上る際に息切れがする場合は受診しましょう。COPDと診断され、治療を受ければ、呼吸が楽になるでしょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)


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