治療・予防

有効な既存治療薬は?
新型コロナ、ワクチン・新薬には時間

 アジアから欧米にも感染が急拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的な大流行を意味する「パンデミック」の段階に達した。ワクチンの実用化には1年から1年半程度かかるとされるため、求められているのが治療薬だ。新薬の開発を目指すとともに、より早く使える既存の薬の中から新型コロナウイルスに有効な薬を探し出そうという動きも進んでいる。現在、各地の医療機関で試験的に治療に使われている薬が複数ある。

HIV治療薬として使われている「カレトラ」(アッヴィHPより)

 ◇抗HIV薬の有効性、慎重に判断

 既に複数の医療機関で使われ、経緯が報告されているのがHIV治療に使われ、同じコロナウイルスによる呼吸器感染症である「中東呼吸器症候群(MERS)」への有効性が示唆されたロピナビル・リトナビル(商品名「カレトラ」)だ。投与された患者の症状が改善したと、複数の医療機関が報告している。

 一方で、早期からこの疾患の治療に携わり、8人ほどの患者にカレトラを投与してきた国立国際医療研究センターの忽那賢志(くつな・さとし)国際感染症対策室長は「既に使われてきた薬なので、投与法や副作用対策などが確立されている点は大きい」とした上で、「確かに投与により症状が改善した患者もいるが、投与後に劇的に症状が消えた、というような事例はなかった。有効な治療薬になるかどうかの判断は、時期尚早だ」と釘を指す。

 同時に「この薬のウイルス増殖を抑える作用は、肺炎などが重症化した患者よりも、重症化の兆候を示した患者に投与した方が有効と考えられる」としつつ、「薬を使って症状が改善した患者もいたが、薬の効果なのか、自然治癒だったのか見極めるためには、より多くの投与患者に対する長期にわたる研究が必要だ」と強調する。

気管支喘息患者などに投与されている「オルベスコ」(帝人ファーマHPより)

 ◇ぜんそく治療薬にも注目

 もう一つ注目を集めているのが、気管支ぜんそくの治療薬として使われている吸入ステロイド剤のシクレソニド(商品名「オルベスコ」)だ。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から8人の患者を受け入れた第2種感染症指定医療機関の神奈川県立足柄上病院(神奈川県松田町)は、酸素吸入などが必要でCT画像検査により肺炎が認められた患者3人にこの薬を投与して良好な経過を得た、と報告している。

 投与された患者の一人は73歳の女性だ。入院時から酸素吸入が必要で、強い倦怠(けんたい)感のためほとんど寝たきりの状態だった。回復後に尋ねると「入院前後の記憶はない」と話した。

 この患者は、さまざまな治療を施しても大きな効果はなく、抗HIV薬のカレトラも投与。しかし、解熱や呼吸状況のある程度の回復はあった一方で、食欲は改善せず、倦怠感も強いままの上に、下痢など副作用も出て投与は中断された。

 このためステロイド剤シクレソニドの吸入を開始したところ、2日程度で37.5度以上の発熱はなくなった。呼吸の状況も良くなり、低酸素血症も改善。食欲も大きく回復し、全身のだるさも消え、退院に至った。残りの2人の患者も同様の経緯をたどって回復したという。

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