東日本大震災の被災地では、子どもの発達や情緒の問題と、親の心の健康などに関する調査研究が続けられている。震災の発生から11日で14年。専門家は継続した支援の重要性を指摘している。
岩手医科大の八木淳子教授によると、岩手、宮城、福島3県で震災後1年以内に生まれた子とその親223組を対象に2015年から行った調査で、親が心に不調を抱えている場合、子の発達や行動に問題が現れやすいことが判明。逆に、子の行動上の問題などが親の負担にもつながっており、相互に影響し合っているという。
発達の遅れなどが見つかった子を相談に応じて専門機関につないでおり、適切なケアや地域の支えがあれば親の回復とともに、子の発達も年々遅れを取り戻していくことが分かったといい、八木教授は「親と子の状態は密接に関連している」と強調した。
その上で、震災のトラウマに配慮して相手に接する「トラウマインフォームドケア」の重要性も指摘。「トラウマのある人には穏やかな声掛けで寄り添う対応をしてほしい」と話した。
八木教授らは27年まで追跡調査する計画で、引き続き支援を継続していくという。
福島学院大は昨年、学内に「福島子どもと親のメンタルヘルス情報・支援センター」を設置し、同7月には福島県南相馬市に現地拠点「浜通りブランチ」を開設した。
センター長の内山登紀夫教授らは震災直後から県沿岸部の「浜通り」地域で、子の発達や心の健康などの調査を続けており、調査結果をもとに保護者や保育士、保健師ら向けの教材や研修プログラムの開発などに取り組んでいく計画という。
内山教授は、同県では東京電力福島第1原発事故による避難指示の解除に伴う移住などで、転校せざるを得ない子どもの心理的負担を指摘。さらに風評被害や、原発関係の仕事に従事するといった立場上感じる負い目など「親も子もそれぞれつらいものを抱えている」と推測する。その上で「もともと専門機関が少ない地域。引き続き支援していきたい」と話した。 (C)時事通信社
被災地で続く「心の健康」調査=震災直後誕生の子や親ら―専門家「支援の継続重要」・東日本大震災14年

(2025/03/11 12:38)