メトホルミンによるコントロールが不十分な成人の2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を追加した場合の有効性と安全性について、中国・Fudan UniversityのLeqing Xu氏らは、ランダム化比較試験(RCT)23件・9,144例を対象に11種類のSGLT2阻害薬を比較するベイズネットワークメタ解析(NMA)を実施。「良好な血糖コントロールと体重減少の観点から、カナグリフロジン300mg投与が最良の選択肢である可能性が示された」とBMJ Open2025; 15: e088687)に発表した〔関連記事『「SGLT2」は高齢者向き、「GLP-1」は若年者向き?』〕。

RCT 21件・9,144例で11種類のSGLT2阻害薬を比較

 この研究では、ベイズNMAを使用し、メトホルミンで効果が不十分な2型糖尿病患者に対する種々の投与量でのSGLT2阻害薬の有効性と安全性を比較した。2024年12月18日までにPubMedなどの医学データベースを検索し、18歳以上の2型糖尿病患者に対するメトホルミンの追加療法として、SGLT2阻害薬による12週以上の介入を評価したRCT 23件(介入数32)をベイズNMAの対象とし、9,144例を登録した。

 有効性アウトカムは、HbA1c低下、空腹時血糖値(FPG)低下および体重減少とし、先行研究から導き出した臨床的に重要な変化の最小量(MCID)との比較により臨床的意義を評価した。安全性アウトカムは、有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)、低血糖、尿路感染症(UTI)および性器感染症(GI)とした。

 登録患者の平均年齢は56.6歳(範囲52.7~60.7歳)、男性が4,846例(53.0%)で、プラセボまたは11種類のSGLT2阻害薬のいずれかとメトホルミンの併用療法による介入を受けた。RCT 18件で糖尿病診断からの平均罹病期間は6.6年(範囲4.9~9.1年)、ベースライン時の平均HbA1c、FPG、体重はそれぞれ8.1%(同7.2~8.6%)、9.2mmol/L(同7.8~10.5mmol/L)、80.7kg(同68.2~91.7kg)だった。

FPG低下、減量でカナグリフロジン300mgが最良

 解析の結果、プラセボと比較して、ほとんどのSGLT2阻害薬との併用療法でHbA1c低下〔平均差(MD)-0.45〜-0.80%〕、FPG低下(MD -0.78〜-2.02mmol/L)および体重減少(MD -0.88〜-2.67 kg)が示された。

 HbA1c低下は、カナグリフロジン300mg (MD -0.58%、95%CI -1.12~-0.04%)、ertugliflozin 5mg/15mgおよびhenagliflozin 10mgでMCID(0.5%)を超えた。FPG低下は、カナグリフロジン300mgのみでMCID(2.0mmol/L)を超えており、MDは-2.02mmol/L(95%CI -2.50~-1.50mmol/L)。カナグリフロジン300mgは他のほとんどのSGLT2阻害薬よりも体重減少(MD-0.74~-2.26kg)が大きかったが、いずれの2つの介入間でもMCID(4.4kg)に達する差はなかった。

 安全性については、henagliflozin 10mgのみがAE増加と関連していた(オッズ比2.29、95%CI 1.29~4.14)。いずれの介入もSAEまたはUTIの発生率を上昇させなかった。一方、プラセボと比較して、エンパグリフロジン5mg/50mg、ertugliflozin 5mg/15mgおよびjanagliflozin 25mgで低血糖の発生率が上昇し、エンパグリフロジン10mgのみでGIの発生率が上昇した。

国内未承認薬も多くランクイン

 治療が最良である確率を推定するSUCRA(surface under the cumulative ranking)値によると、有効性において最高位にランクされたSGLT2阻害薬は、HbA1cではertugliflozin 15mg(81%)、FPG低下と減量ではカナグリフロジン300mg(それぞれ90%と97%)。安全性については、AE発生率はSGLT1/2阻害薬のsotagliflozin 400mg(87%)で最も低く、次いでエンパグリフロジン1mgとルセオグリフロジン5mg(それぞれ85%)。SAE発生率はertugliflozin 10mgとイプラグリフロジン150mg/300mg(いずれも91%)で最も低かった。低血糖はカナグリフロジン300mg(95%)、UTI はイプラグリフロジン12.5mg(86%)、GIはertugliflozin 1mg(93%)とイプラグリフロジン300mg(92%)で最も発生率が低かった。

新規SGLT2阻害薬はさらに検証を

 以上の結果から、Xu氏らは「メトホルミンへの追加療法としてのSGLT2阻害薬は良好な抗糖尿病効果と許容できる安全性を示した。検討対象となった介入の中で、カナグリフロジン300mgはFPG低下と体重減少において有効性が最も高く、HbA1c低下においても有効性が高いが、AEとSAEのリスク増加と関連していた。henagliflozinなどの新規SGLT2阻害薬も有望な成績だったが、大規模なRCTでの検証がさらに求められる」と結論した。

 SUCRAランキングについて、Xu氏らは「実臨床でなんらかのガイダンスを提供するが、その解釈には一定の制限がある。この研究ではSUCRAランキングの誤った解釈を避けるため連続アウトカムにMCID値を使用した。一部のSGLT2阻害薬間でアウトカムに有意差があったが、これらの差の多くがMCID値を超えておらず、実臨床との関連は限定的である可能性がある」と考察している。

医学ライター・坂田真子