中国・Beijing University of Chinese MedicineのJingyi Guo氏らは、非透析の慢性腎臓病(CKD)を合併した2型糖尿病患者を対象とする、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、フィネレノン(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の臨床試験を対象にネットワークメタ解析(NMA)を実施。「HbA1cと体重の減少幅はSGLT2阻害薬が最も大きかった。これら3種類の薬剤はいずれも安全であることが確認された」とFront Pharmacol(2025年3月27日オンライン版)に報告している。
2023年までの39報・9万9,600例をNMAで解析
Guo氏らはCochrane Library、PubMed、EMBASEなどを含む主要文献データベースを2023年11月まで検索し、39試験(39報)・9万9,599例をNMAの対象として抽出した。方法論の質やバイアスリスクは、Cochrane Risk of Bias Assessment tool(RoB 2.0)、エビデンスの信頼度はConfidence in Network Meta-Analysis(CINeMA)、出版バイアスはfunnel plotsを用いてそれぞれ評価し、論文の異質性についてはサブグループ解析で探索。各薬剤の治療効果は、累積順位曲線下面積(surface under the cumulative ranking curve;SUCRA)で評価した。
対象薬剤は、SGLT2阻害薬がエンパグリフロジン、カナグリフロジン、bexagliflozin、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、ertugliflozin、sotagliflozin、GLP-1受容体作動薬がセマグルチド、リラグルチド、エキセナチドで、加えてフィネレノンとプラセボだった。
SGLT2は薬剤間の差が大きい
HbA1c低下効果は、エンパグリフロジンが最も大きく(SUCRA 73%)、セマグルチド(同72%)、カナグリフロジン(同71.8%)が続いた(24報・3万7,252例)。
体重についてはカナグリフロジンの減少効果が最も大きく(SUCRA 90.2%)、最も小さかったのはダパグリフロジン(SUCRA 4.8%)だった(17報・2万7,839例)。
血圧については、収縮期血圧(SBP)では、bexagliflozin(SUCRA 89.6%)とエンパグリフロジン(同82.2%)の効果が大きく、拡張期血圧(DBP)ではエンパグリフロジン(同72.6%)の効果が最も大きかった(26報・5万6,627例)。
LDL-Cに対する影響では、リラグルチドの効果が最も大きかった(SUCRA 100%)。
腎機能への有害な影響〔推算糸球体濾過量(eGFR)で評価〕が最も小さかったのはセマグルチド(SUCRA 79.5%)で、エンパグリフロジン(同79.3%)が続いた。ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、bexagliflozin 、ertugliflozinは、腎機能への悪影響が大きかった(27報・3万2,360例)。
薬剤間の一対比較では安全性に差なし
安全性に関しては、全ての有害事象、尿路感染症(UTI)、低血糖、急性腎障害(AKI)について分析したが、薬剤間の一対比較(pairwise comparison)で差があるものはなかった(31報・9万2,867例)。
SUCRAによる評価では、AKIが最も少ないのはertugliflozinで(SUCRA 72.5%)、カナグリフロジンに比べても有意に少なかった。AKIリスクが最も高かったのはbexagliflozinだった。
以上について、Guo氏らは「体重に関し、GLP-1受容体作動薬でなく、SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンの効果が最も大きかったのは予想外だった」としながらも、「今回の結果は、透析未導入のCKD合併2型糖尿病患者に対する、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、フィネレノンの安全性を確認するものとなった」と結論している。
(医学ライター・木本 治)