失明原因にもなる強度近視=進行抑える研究に進展も
近視や強度近視の人は世界中で増えており、2050年には約47億6000万人が近視に、9億4000万人が強度近視になるという予測がある。失明の原因になり、他の目の病気も合併しやすい強度近視について、慶応大学医学部(東京都新宿区)眼科学教室の鳥居秀成(とりい・ひでまさ)特任助教に話を聞いた。
◇緑内障の合併も
光が角膜と水晶体を通って屈折し、網膜でピントが合うことで、人は物をクリアに見ることができる。成長に伴って目の奥行き(眼軸長)も長くなるが、幼児期はそれに合わせて角膜や水晶体の形が変化するため、網膜にピントが合っている。
しかし眼軸長が伸び続けると、網膜の手前でピントが合うようになるため近視となり、眼軸長が伸び続けるほど近視の程度も強くなると考えられている。屈折値がマイナス6D(ディオプター)かそれを超える強度近視になると、他の目の病気も合併しやすくなるという。
「緑内障や網膜剥離、視神経障害、近視性黄斑症など、失明リスクのある病気を合併しやすくなります」と鳥居特任助教。日本では、強度近視が失明(視覚障害1級)原因の第4位とされるが、合併症による失明も含めると、実際の失明リスクはもっと高いという。
◇近視進行抑制の試み
そのため、失明リスクを減らすには眼軸長の伸びの抑制が重要となる。鳥居特任助教の研究グループは現在、糖尿病治療の第1選択薬で、がん予防効果やアンチエイジング効果などさまざまな分野で研究が進んでいるメトホルミンを用いた動物実験を行っている。
「動物実験では眼軸長の伸びを抑制し、近視の進行を抑える可能性があることが分かりました。光環境を変えるなど日常生活の中でもできる近視の進行を抑える方法の研究も進めています」と、鳥居特任助教は語る。
近視の子どもについては、「学童期の近視と大人の強度近視との関連性はまだ正確には分かっていませんが、3~6歳で眼鏡が必要となるような近視の子どもの場合、11歳時点で平均約マイナス6Dの強度近視になっているという報告があります」と鳥居特任助教。
強度近視の人は半年に1回は検査を受け、合併症の早期発見、治療を心掛けることが重要だ。屈折値や眼軸長の検査は短時間で終わり、体の負担もない。鳥居特任助教は「学校健診でも視力だけでなく、屈折値や眼軸長の測定も行うようになれば、将来的な近視からの失明予防が可能になります」と提唱している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2018/01/11 15:31)