インクレチン関連薬と胆囊胆道疾患リスクとの関連についてのエビデンスが増えつつあるが、肥満の影響を考慮した安全性プロファイルは確立されていない。韓国・Sungkyunkwan UniversityのHwa Yeon Ko氏らは、インクレチン関連薬と胆囊胆道疾患リスクの関連性にBMIが与える影響を、SGLT2阻害薬を実薬対照とした新規使用者デザインによるコホート研究により検討。DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬のいずれでもSGLT2阻害薬と比べ胆囊胆道疾患リスク上昇が認められたが、BMIとの交互作用は認められなかったことをLancet Reg Health West Pac(2025年3月10日オンライン版)に報告した(関連記事「インクレチン関連薬使用時の7つの注意点」)。
傾向スコアによりそれぞれ25万組、4.5万組を一致
2013~22年における韓国の国民健康保険請求データを用いて、実薬対照新規使用者デザインを用いた標的試験模倣研究を実施した。韓国は国民皆保険制で、国民健康保険が人口の97%、5,000万人超をカバーしている。対象は2型糖尿病患者で、アジア人のBMI分類に基づき、正常体重(BMI 18.5以上23未満)、過体重(同23以上25未満)、肥満(同25以上)に層別化。新規のSGLT2阻害薬使用例とインクレチン関連薬使用例(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の間で、胆囊胆道疾患(胆石症、胆囊炎、胆囊・胆管閉塞、胆管炎、胆囊摘出など)発症の複合リスクを比較した。末期腎不全・透析患者、胆囊胆道疾患既往患者、肥満施術歴のある患者などは除外した。
傾向スコアを用いて年齢、性、居住地、所得、健康保険の種類、医療利用歴、他の糖尿病薬使用などの因子を1:1で一致させ、DPP‐4阻害薬使用者とSGLT2阻害薬使用者の比較では、25万1,420組(肥満18万6,697組、過体重3万9,974組、正常体重2万4,749組)、GLP‐1受容体作動薬使用者とSGLT2阻害薬使用者の比較では、4万5,443組(肥満2万8,011組、過体重8,948組、正常体重8,484組)を解析に組み入れ、Cox回帰モデルを用いてハザード比(HR)を推定した。
インクレチン薬はいずれもリスク上昇、BMIとの交互作用はなし
DPP‐4阻害薬使用者とSGLT2阻害薬使用者の比較では、胆囊胆道疾患リスクの全体HRは1.21(95%CI 1.14~1.28)で、DPP‐4阻害薬使用者で高かったが、BMIによる交互作用は認められなかった(P=0.826)。
GLP‐1受容体作動薬使用者とSGLT2阻害薬使用者の比較においても、胆囊胆道疾患リスクの全体HRは1.27(95%CI 1.07~1.50)と、GLP‐1受容体作動薬使用者で高かった。同様に、こちらに関してもBMIによる交互作用は認められなかった(P=0.731)。
サブグループ解析および感度分析の結果は全体的に主解析結果と一致していたが、GLP‐1受容体作動薬使用者では、消化管疾患既往者および肥満の高齢者で胆囊胆道疾患リスクが上昇した。
Ko氏らは「アジア人は胆囊胆道疾患リスクが低いことに加え、過去の臨床試験・観察研究において少数派であるが、今回の研究では、大規模なアジア人実臨床データを用いてより正確な評価を行った」と意義を強調。同氏らは「BMIを問わず2型糖尿病患者でインクレチン薬を使用する際には、胆囊胆道疾患リスクに注意すべき」と結論している。
(医学ライター・小路浩史)